
私は得意派
夜行列車の固いベッドに、まんじりともせずに朝を迎えた。
左手には、薄化粧した大山が見える。
もうすぐ出雲だ。
ふらつく足取りで出口へと向かう。
と、まだ小学校前と思われる男の子がぶつかってきた。
男の子は、しりもちをつく。
大丈夫?と声をかけようとした矢先だった。
だから走っちゃダメって言ったでしょ!
その甲高い声と同時に、男の子の左頬に張り手が飛んだ。
なにもそこまで!
と思った。
女は狭い通路を男の子を引っ張り、私を押し退けるようにして後ろの方に消えて行った。
改札で、
私は、財布が消えていることに気付いた。
