[田舎小説]福井 その1 ★インタビュー | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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新幹線でバッタリ。
原発反対で俳優を辞め、一回り若いお嬢さんと結ばれた、あの山本五十太郎氏の話ではない。

これは1年ほど前、元自眠党総裁、毛利吉朗元首相宅の裏山に、空から人糞の氷った塊が落ちてきた時の話である。

それを聞きつけ、私は福井に飛んだ。

毛利氏の館は北に九頭竜川を望み、永平寺のある大仏寺山を背にした、小高い丘の中腹に建っている。

今回の落下物は国内線ルートにも近いことから、何らかの事故で本来機内に留まるべき糞尿が外に漏れ、冷気に触れて氷となって降ってきたものだろうと最初は思った。

しかし、その時間に上空を飛んでいた飛行機はなかった。
いや、その前に、機内の糞尿が機外に出るような事故ならば、機体自体が墜落の危機に陥る。
が、そのような事故機の情報もない。


“お前らみたいハイエナばかりで、あいつが来ないなあ”

と、毛利氏は言った。
畏れ多くも、元首相である。
その裏山にただならぬものが降ってきたのだから、政府のしかるべきあたりが挨拶と説明にくるのが当然だろう。

毛利氏は本気で怒ってはいないようだが、チッと舌を鳴らした。


“ただちには問題がありません”

テレビからそんな声が聞こえてきた。


“ったく、俺に言ってるのか?あいつは”


毛利氏は、キュウリのぬか漬けをカリッと音をたててかじる。
さすが政界きっての美食家だけあり、キュウリが光っている。



“坊っちゃん先生!”

手拭いを被ったいかにも田舎のじっちゃん風情が、それでもSPなど見えないようにつかつかと書斎前の庭にやって来た。




“こんなもんが近くにありましたよ”



“おい、じいさん。坊っちゃん先生はよせ。俺はもう引退だ”



“何をおっしゃいます。日本の首相までやられたお方が”


“ほほほっ。そりゃ、言い方が違っている。首相までしかなれなかった、が正しい”


“へい、へい”



“で、じいさんが見つけたやつをよく見せてくれ”


“おお、風船か?”



“へえ。戦後はよく飛んできましたが、久しぶりに見ました”



“しかし、爆弾ならある意味分かるが、人糞とはなあ”





“それだけ大変なんでしょな、あっちは”



“ふむ。しかし、まさか、ただちには問題がねえとかいう奴らも絡んでるのか?”




先生と呼ばれるのが嫌なのではない。

その前の言葉が余計なのだ。


二人の話を聞いているうちに、私はなぜインタビューに来たのかを忘れていた。

ここ福井、若狭あたりは浦島伝説、羽衣伝説、八百比丘尼などとつくにとのつながりを暗示する説話が多い。

対馬海流に乗った大陸人たちが渡来した話が、民話となって残っているのだろう。

竜宮城のイメージは、韓(から)、任那だ。

須佐之男あたりの日本書記(一書に曰く)部分や、山幸彦(ほほでみ)の描写は、竜宮城や旧約のイサク(アブラハムの正妻の子、次男だが長男扱い。真の長男はイシュマエル=イスラム教の源)の嫁探しと比較すると興味深い。




ありゃ、福井に関係ない話になってしまいました。


若狭という名前は、アイヌ語の臭いがするなあ。


ワッカ・シラー
→水と岩→海と岩山→リアス