
ロンドン五輪が閉幕した。
日本選手の活躍は素晴らしかった。メダルの数での評価は議論が分かれるところだろうが、史上最多らしい。
さて、これから書くことは開幕前から感じていたことだが、せっかくの地球規模の祭典に味噌をつけても仕方かなろうと思い、今日まで控えていたことを書いてみたい。
なお、これからの話は、五輪に関わる下記の報道が事実だとの仮定で論を進めていく。
その事実とは、今回のロンドン五輪において選手村で用意された寿司にはワサビが入っていなかった、という件だ。
たかがワサビの話と思ってはいけない。
この話が事実ならば、将来の日本、いや将来の暗い世界が見えてくるからだ。
では、なぜ寿司にワサビが無かったのかを考えてみよう。
ロンドン五輪においては、スポンサー保護、別の見方をすればスポンサー神様主義が徹底された。
どういうことかというと、五輪に関わる公式な場所においては、スポンサーになっていない商品は閉め出しを食らわされた。
五輪のスポンサーになれるということは、巨大な会社だということだ。
具体的な金額は不明だが、相当な資金がないと参入できまい。
日本、あるいは世界において、巨大なワサビメーカーやら販売店というのは知らない。
おそらく無いだろう。
だから、五輪のスポンサーと成りえなかった。
最近顕著になってきたが、会社などにとっては“お客様は神様”である。ここでいう“お客様”とは、消費者たる末端の我々庶民のことではない。
会社に資金を提供しているスポンサー、つまり株主のことだ。
株主がダメと言ったなら、ダメなのだ。
だから、寿司にワサビが常識、いや必須であるにも関わらず、その存在を認めないという、極めて異常な事態が生じてくる。
換言すれば、文化、慣習さえ“金”に左右されるようになってきた。
これは、私たちの未来、特に日本のように外からの力に弱い国には、致命的な黒雲を見てしまう。
TPPなどによって輸入が拡大したとしよう。
これら輸入品には関税がかからないのかも知れないが、関税など末端価格に大した影響を与えない。
なぜなら、日本の輸入商品価格の大きな割合は、人件費だからだ。
つまり、TPPで輸入が自由化されようが、末端庶民にはさほどメリットがない。 儲かるのは輸入主やら、その業務に関わる方々か、輸出主、つまり外国の方々である。
輸入自由化により業務が簡素化され、人件費も減るだろうというのは、実に甘い見方だ。
そんなことをしたら、お役人さんの仕事が無くなってしまう。だから、逆に煩雑な手続きが必要になるような仕組みを構築している(だろう)。
少し話が飛んでしまったように見えるが、実は五輪ワサビ抜き事件と表裏一体の未来がここにある。
すべての輸入商品には、使用権が関わってくる。
最も未来を左右するのが、食糧、あるいはその原料たる種などだ。
米やらトウモロコシは、購入した1年しか使えない。その種が成長して実を結んでも、その種子を植えることは許されない。
なぜなら、使用権は最初の種子にのみ有効であるからだ。
これを無視して種まきをすると、莫大な違約金を取られるだろう。
味噌汁は絶滅の危機だ。
大量に市販されている味噌。この原料たる大豆の99%くらいは輸入ものだろう。さらに遺伝子組み換え大豆の背中には、幾多の特許がある。
将来は、これらが商品価格と販路を決定していく。
ロンドン五輪。
素晴らしかった。
が、同時に未来の恐怖も味あわせていただいた。
日本で純国産寿司を口にすることは、現在でさえ不可能に近い。
少なくとも、庶民の口には入るまい。1貫1万とか10万とかいう代物は。
それほど遠くない未来。
現在私たちが口にしている、ほとんど全て海外産寿司でさえ、伝説の食品となるおそれが出てきた。
ナイキ、ペプシの話から始まり、ワサビで味噌のついた今回のロンドン五輪。
胡椒のないカレー。
砂糖のないケーキ(これはすでにあるが)。
牛乳のない“牛乳みたいな飲み物”。
ラー油の入らない担々麺。
そんなものを目にする日は、すぐそこまで来ている。
蛇足
現在人間界では、神の戦いが始まっている。
この神の戦いは、アメリカとか日本のような半独立国に、極めて大きな影響を与えるのだ。