
お客との話は午前中に終わった。
僕は南へ向かった。
車は炎天下の中、発動機のような音をたてている。
3時間分のパーキングチケットを置き、セントーサ行きのフェリーに乗る。
地上100メートルのゴンドラでも行けるが、こちらの方が好きだ。
人ごみは嫌いだが、こうした場所の人の臭いは嫌いではない。
マレー語やら広東語と一緒に、フェリーはわずか10分で私を島に運ぶ。
遊園地の電車気ましのモノレールが西の浜に運んでくれた。
けだるそうにしている売り子からタイガーを買う。
浜辺のヤシの木の下でプシュと缶を開ける。
土曜日だ。
本来休みだし、まっいいだろう。
僕はヤシの葉影で、長袖を来て海に入る若い男女を見ている。
赤道直下。
日が出ているときに海に入る珍しい男女を見ながら、なま暖かくなったタイガーを飲み干す。
いつの間にか、僕は横になっていた。
ボトン。
枕元で鈍い音がした。
そこには、僕の頭より大きな黄緑のヤシの実が落ちていた。
あと50センチズレていたら……。
日が傾き、暑さが少し和らいだようだ。
海辺の若者たちがやっと長袖を脱ぎ、水着姿をさらけだした。
海で遊ぶのは日が暮れてから。
海に入るのは長袖で。
ここの常識である。