蝉の声が、熱気を身体に吸い付けさせた。
右手には、世界一有名な蛙の池がある。
あの方は、蝉時雨の中に静寂を見いだし、蛙の作ったさざ波の中に永遠の命を育んだ。
列車は盆地の中をのんびりと走っていく。
ここを訪れるなら、普通は新幹線を使うだろう。が、私はどうしても仙山線に乗りたかったのだ。
作並渓谷を満喫するには、車よりもローカル線の方が良い。
断崖の中を走る車両に枝を伸ばした木々があたり、窓の隙間からはヤマユリの香りが入り込んでくる。
あの蝉はアブラゼミだ、いやヒグラシだと熱い議論をする方々がいらっしゃる。酔狂なことだ。
まるでストロンチウムだ、いやプルトニウムだとかいう議論に似て、中身を考えていない。そんな表面的な議論に喜びを感じる方は、おそらく静けさや枯野をかけめぐる夢は見ないであろう。
と考えているうちに、DEはこじんまりしたプラットホームに滑り込んだ。
そこに降りたつと、暑さが突き刺してくる。さすが日本一暑い場所だけある。
日が、世界屈指のアスピーテに落ちていく。
振り返れば、日本独自の権現様が聳えている。
最後の梅雨を集めた北へ上る川が、句通りの流れを見せている。
さて、今夜は上山で汗を流すか。
たこ部屋ならぬ立派な温泉付き旅館に泊められ、当時のアルバイトとしては破格の待遇で働いた昔が思い出される。
★蛇足
最近、置賜地方では小さな鯰が暴れている。
秋田県境から青森にかけての、日本海よりに棲む鯰も珍しい。
これらは、東日本大地震の反動だろう。
太平洋側は沈み込むが、日本海側は逆に跳ね上がる。
秋田のところで出たケツ田とは、ケスタ地形の聞き間違えだろう。

ツタの実。ツタはブドウと同じ仲間だ。
★これは聞いた話で裏はとっていないが、あの時山形から宮城に救援物質を運んだトラックが、なんらかの理由で入県制限を受けたという。
混乱防止の意味もあるかも知れないが、体育館に集められた物資のあの団体がらみの怪しい噂と同様、気になるところだ。
噂が本当なら、大津のあの連中同様、人間の皮を被った何かである。