恵方巻きというのは、比較的新しい食べ物のようだ。
恵方巻きの発祥に関しては諸説あるが、かなり有力な説の1つに、栃木県壬生町にある磐裂根裂神社の巻き寿司を起源とするものがある。
この町は実に面白いところだ。
町の南には思川という利根川の支流があるのだが、この思川沿いは日本でもかなり古くから開けたところで、数々の古墳がある。
スターウォーズの種本だと私が思っている、半村良の超長編伝奇小説『妖星伝』も、実はこの壬生にある祠(おそらく車塚古墳)から始まる。この古墳は日本でも円墳としては最大級で、『妖星伝』にあるような祠もある。
一方、磐裂根裂神社は壬生の北端、宇都宮と接するあたりのやはり古墳の可能性のある小山に鎮座する。あまり冴えない神社だが、なんらかの感受性がある方にはパワースポットでもあるだろう。幸か不幸か、私にはその能力はないが。
一説によれば、ここで節分に無病息災などを祈願して作った巻き寿司のようなものが恵方巻きの起源だということだ。
磐裂根裂は、日本の非常に古い神(豪族?)で、古事記にも最初の方に出てきた気がする。
名前からして、苔のむすまで思想に似た、自然崇拝から生まれた神だろう。
壬生と言えば、AKBの大島優子や反原発歌の斎藤さん(この方のオヤジは、私のイメージにある武士である)など、一部の世界ではよく知られた方々を輩出している。
そういえば、阪神大震災での活動が世界中に知られた、何代目かの△口組組長も、ここの出だった気がする。
壬生は、京都の壬生から来た名前なのだろうが、やはり京都から持ち込まれたふくべ(かんぴょうのもとになる実)の生産は日本一だったと思う。
近くには慈覚大師の生誕地、あるいは道鏡の終焉地、紫式部の墓(ただし、どうみても鎌倉以降のもの)などがあり、なかなか面白い地だ。どうも、日本最大級の天狗である役小角や、義経の東北逃れ、新撰組にも関係が深い場所である。明治まで生きた学者でもあるが、世間では非常に評判の悪い『江戸の妖怪』こと鳥居耀蔵にもなんらかの関係もあるかも知れない(これは私だけの考え)。
恵方巻き。
私の田舎は、この壬生に比較的近いが、節分に恵方巻きを食べる習慣はなかった。
ただし、節分に限らず、恵方巻きに似たものをよく母が作っていた。
遠足などは必ずそれだった。
少し斜めに見れば、恵方巻きは、壬生特産のかんぴょうの販売促進のために発明された食べ物だったにちがいない。