【不老不死】その5 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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政は魚が好きだった。
特に緋魚の油あんかけをよく口にしたが、最も好んだのは半生のその内臓だ。

半生の臓物には、まだ生きながらえた線虫が蠢いている。

政は重い寄生虫病にかかりつつあった。腹が空くと胃がチリチリと痛み出し、癇癪もちの政のイライラは頂点に達するのであった。
数々の医者が治療を試みた。が、一向に回復の兆しは見られなかった。

ここに現れたのが海船問屋で財をなし、自らは蓬莱仙人の弟子となのる男だ。
のちに、徐福と呼ばれるようになる男である。

徐福は政に、朱色の丸薬を献上した。


この丸薬の効果はてきめんだった。

昼に丸薬を飲んでからしばらくすると、急に大をもよおした。
政の尻拭き男は、その中に白く細長い紐のようなものを幾本もあることに気付いていた。



あくる日、政は久しく味わったことのない爽やかな朝を迎えたのだった。



仙人の弟子とやらの薬が効いたようだ。


そやつを連れて参れ!

政は山東に使いを走らせる。




しかし、この丸薬だが、実は……。




★たぶん、しばらくつづかない。




なお、赤い丸薬で駆虫薬と聞けば中2理科の還元実験で習うアレである。
江戸の風俗に興味がある方なら、赤ふんと緋色の紐と言えばピンとくるだろう。
これは古代祭礼、ミイラ作り、奈良大仏建立にも深く関わる、金とならぶ当時最高の貴重品であった。

今は、危険物として廃棄にも許可がいる。


そんなわけで、不老不死を夢みた政だったが、自ら寿命を縮めていたとは、彼自身夢にも思わなかったろう。
いや、阿房宮の誰一人知らなかった。

戦前、ドイツ人がハイネケンを真似てビールを醸造しはじめた半島にいる、あのチョビ髭を除いては。

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