今、患さんが怯えるもの(独り言)それは“おばけ”である。 とは言っても、四谷怪談に出てくるお岩さんの類ではない。 目には見えない、いや、二本足のある、冷静なおばけだ。 おそらく彼は、その呪縛から逃れるために無我夢中になっている。 彼ならば、おばけの怖さを知っているだろうからだ。あせりが、彼の精神を蝕んでいく。判断力だけでなく、正常な精神でいられるか、いささかあやしくなってきた。だからこそ、山の上を戻した。 怖いのである。 防波堤が欲しいのである。 仕分お嬢は、飾りではない。 魔除けのつもりだろう。