山火事が生んだ酒 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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テキーラって飲んだことある?ブログネタ:テキーラって飲んだことある? 参加中

私はある!



その日はカリブ海に発生した低気圧が急激に発達し、東海岸は凄まじい暴風雨に襲われてた。

しかし、山脈の西側にある盆地のテキーラの村には、すっかり水分を落とした乾いた風が、熱風となって吹き込むばかりだった。
そうではなくとも乾燥しているテキーラ。村外れにある木々が、熱風に煽られ悲鳴をあげる。




「火事だ~!山火事だ~!」


誰かが声を張り上げた。


フェーン現象で熱地獄となった村は、その煙に夕暮れの世界となる。





「おい、なんか匂わないか?」

3年前に、イスパニアから新天地にやって来たロドリゲスが、ラバに家財を乗せ火の手から逃げる算段に忙しいヘルジナンドに言った。

「山火事だ。焦げ臭いのは当たり前だろうが」

ヘルジナンドは、呑気そうな顔に似合わず、甲高い声を上げる。



「いや、そうじゃないよ。なんか甘い匂い。そうだ。酒の匂いだぜ、これは」

ロドリゲスが舌なめずりする。



「こんなときに、なにを寝言を言ってるんだ。これだけ風が強いと、早く逃げねえと、命がなくなるぜ。バカ言ってないで、お前もラバに荷物を乗せて逃げろ。俺は待ってないからな」


ヘルジナンドは、背中を見せて、また荷造りに専念し始める。







マヤの子孫たちは、昔からその刺を持つ植物を洞窟の穴に入れておくと、神の世界を味わえる水ができることを知っていた。

しかし、彼らを村から追い出した白い獣たちには、けしてその作り方を教えていない。


彼らには、第4の太陽が生まれてから4700年目に、東の海に鳥の羽根を付けた白い神が現れ、彼らを天国に誘うという言い伝えがあった。

確かに、東の海から白い羽根を付けた乗り物に乗って、白い神に似た人たちが来た。


が、彼らは神ではなかった。

王を殺し、黄金を盗み、エメラルドを騙し取る悪魔だった。



酋長たちは、神の水と神のキノコについてだけは、けして教えなかったのである。








中米に自生していたリュウゼツランを焙り発酵させた後、複数回蒸留した酒は、その村の名前をとってテキーラと呼ばれる。


テキーラには、かつての日本酒の等級基準のようないい加減なものではなく、メドックのブドウ畑くらい厳しい基準があるようだ。






と、思いつくままに書いてみました。

が、3割くらいは本当の話ですよ。