おいおい。
ホモ・サピエンスなんぞと、自ら傲慢な名前をつけている後輩たちよ。
勝手に我々を、小惑星や火山、あるいはポールシフトで絶滅したなんて決めつけてくれるな。
俺たちは、そんな理由で地上から消えたのではないのだ。
確かに、小惑星が、お前たちがメキシコ湾と呼ぶ海に落ち、巨大な津波と地震に、右往左往したこともあった。
シベリアの火山噴火で、百年の冬も迎えたことがあった。
磁極の逆転で、子孫が激減したこともあった。
が、それでも俺たちは生き延びた。
が、あいつには、我々の体が着いて行けなかった。
いや、そればかりか、我々の食料を駆逐して行った。
そうだ。
お前たちに分かり易い言葉で言うなら、アレルギーだ。
被子植物の増殖は、あまりに急激だったのだ。
奴らは、花とかいうものをつけ、子孫を増やす為に花粉とかいう毒の粉を使うようになったのだ。
さらに、花びらとかいう気色悪いものの中に、アントシアニンなんかをたっぷりと蓄えた。
我々は呼吸に苦労するようになる。
鼻水だけではなく、全身の皮膚が炎症を起こし始めたのだ。
やがて、日和見感染し、ヘルペス関連細菌が心臓、脳を冒すようになった。
我々は、こうして生き絶えたのだ。
イリジウムだけにこだわって、小惑星衝突説にしがみつく輩。
もう一度、私の皮膚と骨を調べてみなさい。
はっきりとした、異常が見つかるはずだから。
地球歴 42億8701年
夏:旧盆の終わり
霧雨
アラガントザウルスペキネシスexe.