えー、お正月と申しますってえと、よく一富士二鷹三茄子なんて言いますな。
で、これっていうのが、初夢に見る縁起のいいやつなんだそうで。
おーい、為五郎。
おめえさんも、初夢なんぞは見たんかい。
こりゃ、大家さん。
明けまして。
へえ、見やしたよ。
ほう、で、どんな夢だったい?
へへへへっ。
おいおい、新年そうそう、下卑た笑いなんざしなさんな。
なんだい、たいそういい夢でも見たのかい。
へへっ。
ほら、また。
どうせ、夜鷹との会瀬の夢でも見たのじゃな。
ありゃ。
なんで、大家さんはご存知で!
あれまあ、当てずっぽうが当たったかい。
へい。
そりゃ、最高の夢でがんして。
何が最高かね。
正月そうそう、ろくでもない夢なぞ見ておって。
いや、お言葉でがんすがね。
世間様じゃ、一富士二鷹三茄子って言うじゃあござんせんか。
それを、みーんな一度に見ちまったわけで、こんなにめでてえこたぁ、ないでがんしょ。
ほう、三つとも夢に出てきたって言うのかい。
へえ。
深川の富士見橋の下にいた夜鷹が、こりゃまたべっぴんで、その上、胸がこう、富士のお山みてえにとんがってましてな、ほんでもってオイラの茄子が、……。
げへへへへっ。
これまた、富士の山。
ああ、めでてえでがんしょ。
大家さん。
ダメだ、こりゃ。