
私は銀座派
この話は、太平洋の西端にニッポンと呼ばれる弧状列島があったとされる時代のことである。
当時、この列島にはトキオという大きな集落があり、その人口は20万人とも、50万人とも言われている。
が、これはどうみても法外な数字なので、せいぜい5万人くらいの大集落だったと考えるのが妥当だろう。
それにしても、信じられない過密な生活圏を作っていた。
現在、我々の住むシンワは、この列島の約20倍の広さを持つ。
年間降水量が100mm以上ある、豊かな土地が広がっているにもかかわらず、その全人口は63万人程度である。
極めて小さい列島の、しかも粟粒のような土地に、我が国の1割近い人間が生活をしていたわけだ。
これだけでも信じがたいことではあるが、最近の海底発掘により、さらに驚くべきことがわかってきた。
これは伝説だが、トキオの中心部には、ギンザという楼閣があり、丑三つ時も魚油を絶やさず炊いていたといわれていた。
が、先の発掘の結果、ギンザと比定される場所から西に5キロメートルほどのところ(伝説ではチンチュクあるいは、カワムキチョ)から、幾本もの高品質のろうそくと、ロープなどが見つかったのである。
これは画期的な発見である。
この近くには、ミイラ化した男性も見つかっているが、その皮膚は、鞭うたれた跡が顕著であった。
おそらくこれは、夜もすがら、ろうそくの火を消さぬように見張り役として役に服していた奴隷であろう。