
今日は朝飯なし。
いや、これはよくあることなのだが、なんと水1杯も飲んでいない。
朝のコーヒーが飲みたい。
とは言っても、缶コーヒーだが。
そう、今日は待ちに待った?、年に一度のバリウム飲みゲップ我慢大会の日なのである。
いや、ゲップを我慢するだけではない。その張ったお腹をグリグリされたうえ、まだゲップするなよ、とやられる日なのである。
去年までは、この定期健診というやつが嫌で仕方なかった。が、今年は違うぞ。
というのは、しっかり目標を決めて健診に臨んだからである。
その目標とは、
笑わせること10回以上。
そうだ。
多忙を極め、時にわがままな患者さんに苦しめられているかも知れない看護師さんから、目一杯の笑いを引き出してやるぞ!との勇壮果敢?なチャレンジャーとして、颯爽と病院へと足を運んだのであった。
うん。我ながらなんと素晴らしい健診心がけだ、と空く腹をなだめつつ問診票を差し出す。
まず最初は、心電図。
“冷やっとしますよ”
と、皮膚から端子が外れにくくするジェルを塗る前に看護師さんが言った。
“いや、大丈夫”
と、私は余裕で答えてしまった。
ああ、大失敗だ。
本来なら、“いいえ、あなたの暖かい心があるから大丈夫”と言うべきだった。
うう、一つ笑いを逃したぞ。
次は聴力検査。
“最近、聞こえが悪いとかありませんか?”
と、ヘッドホンみたいな機器をつける前に聞かれる。
“いや、特にありませんね”
あっ、バカ!また、やっちまった。
ここでの正しい答え方は、
“はい、最近、心の声が聞こえません”のはずだ。
まずい。
笑わせる機会が減っていくぞ。
私は少しあせり出す。
“じゃあ、次は胃の検査です。こちらへどうぞ”
中肉中背、涼し気な風を纏った看護師さんと、狭いエレベーターで二人きり。
チャンス!
ガバッ!
というつもりはない。しかし、この時点でなんか言わないと。
“私は好き嫌いはないんですが、どうもバリウムと発泡材の取り合わせはねえ”
看護師はクスリと笑う。
ダメだ。これはお愛想笑いの類。うーん、とうなる間もなく、チーンと音がして4階へ。
“はい、痛いですけど我慢してください”
看護師さんは、子どもをあやすような声で言う。
“いや、この程度ならなんでもないですから”
あちゃあ、またやっちまった。
ここでは、
“いいえ、あなたの顔を見ていれば、蚊にさされるより痛くない”がマニュアルの答えなのに!
というわけで、その後何度も誤答を繰り返した私は、結局、目標の一つもクリアーできずに健康診断を終えてしまったのであった。
ああ、反省しきり。
来年こそ頑張ろう。