日を重ねるごとに、女への思いは薄まるどころか一層せつないものになっていった。
数日の後、男は樫丘へと流れ下るせせらぎの淵に立っていた。
その手には、紅い柿の葉がある。
男は思った。
この柿の葉を、歌を詠んだその女がひろいあげてくれるのではないか。
男は、顔が歪むのを感じながら、柿の葉にしたためた歌を口づさんだ。
水とても 重石置きて留むれば いつの日にかは 松の芽ぞふく
重い石を敷き詰めれば水もせき止められ、枯れそうな松も芽をふくことでしょう
との意味だが、もちろんこれも女の歌同様、掛詞の歌である。
あなたを見なくとも、ずっと思って待っていれば、いつの日かあなたに会えますよね
という意味が隠されている。
つづく