小説:双詩創愛 その4 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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日を重ねるごとに、女への思いは薄まるどころか一層せつないものになっていった。

数日の後、男は樫丘へと流れ下るせせらぎの淵に立っていた。 
その手には、紅い柿の葉がある。 

男は思った。 

この柿の葉を、歌を詠んだその女がひろいあげてくれるのではないか。 


男は、顔が歪むのを感じながら、柿の葉にしたためた歌を口づさんだ。 



水とても 重石置きて留むれば いつの日にかは 松の芽ぞふく 



重い石を敷き詰めれば水もせき止められ、枯れそうな松も芽をふくことでしょう 


との意味だが、もちろんこれも女の歌同様、掛詞の歌である。 





あなたを見なくとも、ずっと思って待っていれば、いつの日かあなたに会えますよね 



という意味が隠されている。 



         つづく