恐怖の6時間半 最終回 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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ピンポーン。 

また、チャイムが鳴りました。 


室内灯が落とされます。


まずい。 


こんな状況で、寝られるわけがありません。

と、天の助けか。 

彼女がトイレに立ちました。 


もう、すべきことはただ一つ。 

三十六計逃げるが勝ちです。 

私はアタッシュケースと上着を持って、先頭右側の翼付近の席から、まさに脱兎の如く、最後尾に近いエコノミー席に移動しました。 


多少狭いですが、まあ、隣に得体の知れない方がいて、へたするとこっちが犯罪者になることを考えれば、はるかに気が休まります。 

いくらなんでも、機の先頭の方から最後尾までは来ないでしょう。 

だいたい、薄暗いし、また、そこまではいくらなんでもしないでしょう。 


しかし、機が満席でなくてよかった。 
さらに、スチュワーデスさんもある程度わかっていてくれた様子。ラッキーでした。 


が、私は朝日に輝くチャンギ・シンガポール空港が見えてからも、また、税関を通り抜けからも、なにか冷たい視線のようなものを感じ、しばらくは人心地つかなかったのです。 




今でも、その時の女性の顔つき、すごい握力はよく覚えています。 



そう言えば、その“女性”の指は、ひどく節くれだっていた気がします。  




タイやシンガポールには、女優真っ青の“彼女”がたくさんいることはよく知られています。 

果たして、あの時の彼女が“彼女”であったかどうかはわかりません。 


私が人生で数少ない、必死になり逃げ隠れた事件でした。 


なーんだ。全然怖くないじゃないか。

そういうあなた。
怖いものとは、人によって差があります。

例えば私は、お化けや幽霊は全く怖くありません。
むしろ、現れてくださるなら嬉しいくらいです。


警察の方も、なぜか親近感のようなものが湧きます。

……………………………

今は、逃げることはあまりしません。 

なぜ? 


隠れても術の未熟な私は、尻をのぞかせたたままですから。 



だから、ブログにかなり正直な意見なんかを書いたりしているわけです。 





         おわり