
「○○紀香にそっくりだったから」
目を輝かせてそう言った彼に、めちゃくちゃカチンときたわ。
確かに、あたしは紀香に似ているかも知れないわ。
でも、でもよ。
たがらあたしを好きになったって?
そんなのアリ?
ひどくねえ!
バッカじゃなーい。
あたしは、あたしなのよ。
紀香に似てたって、あたしは紀香じゃないの!
ひょっとして、あなたが抱いているのは、あたしじゃなくってあの子?
冗談じゃあないわ。
あそこに、蹴りでも入れたい気分。
あなたは、ずっと紀香の影でも追っていたら。
せいぜい、お元気で。
じゃあねえ。
バイバイ。
短い間だったけど、あたしも幸せを感じたこともあったわ。
バカよねえ。
はーぁ。
あほらしくなってきたわ。
そうだ。
最後に教えてあげるけどね、女子高生ぐらいまでならともかく、誰それに似てるって言われて、心の底から幸せを感じる大人の女はいないのよ。
イメージ参考
土佐日記:紀貫之
宇治拾遺物語:作者不明
女たちの神々:しま爺