
最近は子どもも大きくなってきたし、下の子は、もともとパソコンゲームの方に興味をそそられていたから、公園などには行かなくなっていた。
下の子は、草花には全くと言ってよいほど興味がない。
学校が終わってからの、山の中を散策するのがなによりの楽しみだった私とは大違いである。
そんな息子と、先日久々に公園に行った。
私は、ちびが平気で踏みつぶしそうになるマルバスミレとか、シュンラン、ヒメヤブランなどに気をつけて歩くことや、その名前を教えたのだが、あいつの頭はフシギバナとか、ヤドランとかいうポケモンのキャラクターの方が親しみやすいらしい。
フーッとため息をついて遊具のある所に戻った。
…………
★ここから、妄想モード突入
…………
「シーソーにでも乗ろうか?」
名前の知らない葉をたくさんつけた木の大きな木陰には、不思議なカップルがいた。男は、どことなくドラえもんのジャイアンに似ている。
一方、女の方はドロンジョに似て、どこか小悪魔的な顔と出で立ちをしている。
シーソーに乗ろうと言いだしたのは、男ではなく女の方だった。
男は体つきと厳めしい顔つきにもかかわらず、顔を赤らめながら、「はい」と頷いた。
ドロンジョ風の女が、少し苛立たしそうに男の手を取る。
男は一瞬ビクリとしたように体をこわばらせた。
「あんたは、そっちでしょ。シーソーは同じ方に二人が乗ったらダメでしょ!」
男が女の後ろに腰掛けたので口をとがらせたのだが、その口元は少し歪み、まなじりは垂れているようにも見える。
けして、本気で怒っているわけではないようだ。
男はしぶしぶ、反対側に座った。
と、そのとたん、女の体重の2倍はあろうかと思われる男が座ったことによるテコの原理、作用・反作用の法則から、女の体が空に向かって飛び出した。
女はどんどん高く昇っていったが、地球の重力に引き寄せられ放物線を描きながら落ちてくる。
ああ、あわわわ!
男が低い声をあげた。
が、女は地面すれすれのところでフワリと止まり、にこやかな笑顔を見せている。
「シーソーはね、お互いが同じくらいの重さじゃないといけないこと、すっかり忘れてたわ……」
女が少し間をおいて言葉を続けた。
「……それと、お互いのタイミング、息があってないといけないのよね。両方に見えない言葉があって、初めてシーソーには乗れるんだもの」