
今日は朝からハイテンションである。
なぜなら、私のよくおじゃましているブロガーさんから、
「家へ遊びに来てくださいな」
なんぞという、暖かい言葉をもらってしまったからである。
さあ、大変だ。
そのブロガーさんは、フランスレストランの経営者。銀座、赤坂、六本木、魚釣島、南極大陸昭和基地にお店がある超高級店。
さあて、田舎者でおふらんす料理なぞ知らぬ私は、嬉しさ半分、戸惑い半分で、銀座にある店を訪ねることにした。
とにかく春である。
いつも草むしりばかりしていないで、たまには都会の空気を、「春の陽気に誘われて」とでも言い訳して味わうのもいいだろう。
田舎者でも、上野あたりなら、まだ、固くならずにすみそうだ。しかし、赤坂なんていうと、名前を聞いただけで迷子になりそうだから、東京駅からでも行けるという銀座にした。
そういえば、『銀恋』の有楽町にも近いという。うまくすれば、裕次郎に会えるかも知れない。
私は新しい下駄を買い、若者に人気があると聞いたジーパンをしわくちゃにし(さすがに破ったりは出来なかった)、ユニクロで白いシャツを買い、紐ネクタイをつけ、一張羅の大島紬を羽織って出かけた。
道行く人も、電車の中でも、私は皆の注目の的であるのがわかる。
それはそうだろう。
これだけバッチリ決めた服装だ。なんと言っても下駄は黒檀だ。そこんじょそこらにあるものではない。多分まわりの人たちは、私の下駄の素晴らしさに声も出ないに相違ない。
その証拠に、皆私が目を向けると、恥ずかしそうに下を向いてしまうではないか。
多少道に迷ったが、無事目的の店に着いた。
と、入り口になんか星のマークがついている。
『ミシランゾ★★★』
これは何かのまじないでもあろうか。
多分、一見のお客はダメだということでもあるのだろう。
★が3つあるのは、3回目からやっと一人で入れるということに違いない。
やはり、そうだ。
ドアを開けたとたん、俳優かと思われるような顔だちの長身の男がやってきて、ワシ自慢の下駄と大島紬を舐めるように見て「ただいま満席でして」とか言いよった。
あのな、オラはさとさんによばれたんだべさ。
おっと、いけない。
緊張のあまり訛りが出てしまった。
男は狐につままれたような顔をした。
と、その男の後ろから、プロフィール写真で見るより、はるかに若々しく美しい女性が現れた。
写真だけでも田舎では太閤様以来の美人と噂だったが、本物は聖徳太子以来の美形。
私の田舎なら、弁天様の隣に社でも造るかも知れない。
(褒め過ぎだ、と空耳がした)
あのう、お連れ様は?
ああ、そうじゃった。
今、パタリロだかイタリアだかを旅しているあやつと一緒に来い、と言っていた。
すっかり忘れとった。
いやあ、あのお方はブログコメントに似合わず臆病でして。
なんぞと嘘をついてしまった。
忘れたなんぞと言ったら、ボケたと思われる。
よし、嘘を通そう。
お品書きを別の、これまた俳優くずれが持ってきた。
アペリティーフは、何になさいますか?
うーん。
アペリティーフってなんだ?
黙っていると男が続けた。
こちらのメドックか、白ならブルゴーニュがお薦めかと。
何?メンダイコか白いブルコギ?
そうか、朝鮮料理ならなんとかなるぞ。
うーん。メンタイコにするか。
ほいじゃ、明太子。辛くっても大丈夫だ。
男は、少し眉を動かして聞いた。
何年物がよろしいでしょうか?
はあ、明太子は半年がいいところだ。何年も昔のものは良くないだろうに。
いやあ、新しいのでいいわい。
では、プルミエクリュでよろしいですか?
変なことを聞くものだ。
プリクラと何が関係するのだろう。
さとみんさんは、そんな私をにこやかに見ていたが、男に言った。
あたしはドゥ・ロー。
? ? ?
なんだろう。
私もさとみんさんもよく知っているボクサーの方が、試合で引き分けにでもなったのだろうか。
時々、さとみんは不思議なことをおっしゃいます。
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これは妄想であり、登場人物に似たようなブロガーさんとは、一切係わりがありません。
って、断わり入れる必要もないですわな。