
あれは田舎の実家が、まだ藁葺き屋根の頃だったから、まだ小学校低学年の時に相違ない。
シロだったかジョンだったか、失礼なことに明確な名前は忘れた。
我が家に雑種犬がいた。
このワンコは、貧相な外観にもかかわらず、なぜか女の子には、たいそうもてた。
すぐ隣の家に、私より5つ、6つ年上の綺麗なお嬢さんがいて、これまた、たいへんなもてようだった。多分私もそのお姉ちゃんに、淡い恋心を抱いていたに違いない。
ある時だった。
我が家の女子好きワンコが、そのお姉ちゃんと戯れあっていたが、なんと恥知らずにも、ハレンチにも、場をわきまえずに、白昼堂々と、私たち大勢の見守る中で、そのお姉ちゃんのスカートの中に潜り込んでしまったのである。
ああ、なんということだろう。
今の私なら、犬としての礼儀、作法、心ばえなどをとくとくと話し、お嬢様に対するマナーなども教えたであろう。
が、その時はただただ、そのワンコになりたかったのであった。
若かったものである。