
選択肢がたくさんあるようで、一つしか選ぶことができない設問。
まさに、これがそれであり、私はあれにしかなれないことは、誰がどのように考えをしてもわかる。
つまり、『カメハメハー』とか、どっかを『ツンツン』して若い娘さんにしかられる役どころにの、あの爺である。
と、やたら指示語を多用してみた。
が、わかる人には十分通じるにちがいない。
実に日本語というのは、面白い。
とにかく、主語がなかろうが、話し言葉で、男か女か、若いか年寄りかさえわかる場合が多い。
日本語文学に素晴らしいものが多くとも、ノーベル文学賞をとりづらい理由の一つは、日本語であることをあげられる。
英語のような簡単な形容詞や言い回ししかない言語では、日本語を翻訳するのに多大な労力を要しても、なかなか行間の意味、状況が伝わりにくいだろうからだ。
例えば、夏目漱石が教え子に、
I love you.
を日本語にしてみろと言った。しかし、どの生徒からも満足するような答えが出てこなかった。
そこで、漱石が模範解答例として、こう言った。
「月がとってもきれいだね」
この話を聞いた多くの日本人は「なるほどねえ、なかなかやるわい」となるだろう。
が、はたして何人の外国語を母国語とする方に、この話が通じるだろうか。
What a beautiful moon it is!
たぶん、英語だとこんな表現かも知れない。
が、恋人と海岸をそぞろ歩きながら、
「月がとってもきれいだなあ」
「そうね」
の雰囲気や、どちらが男でどちらが女なのかは伝わるまい。
このように、日本語は繊細で難しい言語である。
が、もちろん、日本語が世界一難しいなどとは言わない。
世界には、信じられぬほど複雑な言語もある。
例えば、フランス国境付近に住む人たちが使うバスク語は、私の知っている限りでは、現在生き残った言語のなかで、最も複雑な言語体系を持つ。
笑い話に、『ある時、悪魔がバスク人を誘惑しようとしてバスク語を学んだ。が、3年で覚えられたのは、“はい”と“いいえ”だけだった』というのがある。
誇張ではあるが、バスク語の難しさをよく表していると思う。
英語は簡単な構造と言ったが、日本人にとっては難しく感じてしまう表現もある。
例えば、
Do you know that that “that”that that one used was wrong?
これを明確なアクセントをつけて話せば、ほとんどの英語を母国語とする人たちには通じるだろう。
が、この英語の意味がさっとわかる日本人は、関係代名詞を使った過去問を勉強している受験生などを除けば、あまりいないように思われる。
さて、日本語にもこれと似たなぞなぞがある。
すもももももももものうち
という、あれである。
これも、区切りをつけ、アクセントをつければだいたいの日本人なら、その意味がわかる。
ところで、これと同類だが、日本語でしか表せないなぞなぞを一つ。
子子子子子子子子子子
さあ、何と読む?
実はこれ、宇治拾遺か今昔物語にあるものだ。
現代の私たちには、ちと難しい。
読めますかな?
なんていうことをし、ニヤニヤしているかぎり、私は悟空にもスーパーサイヤ人にもなれない。
やっぱり私にお似合いは、カメハメハーの、あの爺っちゃまであろうな。
でも、ツンツンとかはしませんよ。
もう、卒業、いや、引退しましたからの。
…………………………
いやあ、今週は疲れましたなあ。
平均睡眠時間3時間くらい、3人分くらい働いた気はしますが……。