【連載】エーデルワイスの咲く丘で 3 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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チャンギ空港には、出発1時間前に着いた。
まだ、早すぎる。 
ラスト・コールが流れる直前くらいに搭乗手続きをし、自分の名前が呼ばれるくらいじゃないと、ファーストクラスへの席替えという天恵は訪れない。 


焦りの色を見せるケブちゃんを横目に、重量チェックのお嬢さんに冗談を言いながら、9キログラムオーバーのサムソナイトを見逃してもらい、私はのんびりとゲートへと向かった。 



チャンギ空港は、世界一と言われたこともあるほど、ショップが充実している。 
フランスに行く途中立ち寄る、ロンドン支店の駐在員の為に、お土産を選らんでいるうちに、私の名前が呼びだされていた。 


搭乗口には、いささか苛立ち気味の係員が待っており、搭乗券を切ると同時に飛行機とのゲートを閉じた。 

残念ながらファーストクラスへは移してもらえなかった。 
搭乗率は8割というところだろうか。 

大半は、給油地のドバイ、アラブ人である。 
ちらほらと西欧人の顔も見られるが、東洋人らしき顔を確認することはできなかった。 


そりゃ、そうだろう。 
もし、日本から西欧に行くなら、今使っている南回りの半分以下の時間でつける。 

さらに、地球の自転と反対方向に飛ぶから、夜出発したなら、まる1日近く暗闇の中を飛ぶだけの、実に面白みの無い旅だ。 
ある程度旅慣れた人には、その方がありがたい場合もあるが、私なんぞはいくら飛行機の旅をしても、やはり風景を楽しみたかった。 


一旦、インドネシアの海に出、島に別れを告げるように旋回した機体は、一気に機首を持ち上げ、南国の漆黒の中に真珠をちりばめたような光瞬くシンガポール島をあとにした。 



    
         つづく