
『ありがとう』という言葉と『ごめんね』という言葉とでは、本人が意識していようがいまいが、大きな違いがあります。
現代使われている『ありがとう』は、相手の好意に対する感謝の気持ちを表わすものです。
ですから、『ありがとう』という場合には、自分の精神的な立場は、相手に対して、特にへりくだったりしているわけではありません。
つまり、あまり自分を圧迫するようなものはないわけです。
一方、『ごめんね』は、自分の落ち度を認め、相手に許しを請う場合に用いる言葉です。
ですから、精神的には、少なからず自分を下げたものにしなくてはなりません。
おそらくそのためと思われますが、『ありがとう』より『ごめんね』のが苦手という人が多いように思われます。
ただし、仕事の関係で、毎日何回、何十回となく二つの言葉を使わなくてはならない職場もあります。
このような場合には、特に両者を区別することなく、また、特に抵抗感を感じることなく、自然と『ありがとう』『ごめんね』がでてくるようになります。
つまり、会社などで多くの第三者と接する機会が増えれば増えるほど、両者の境は曖昧になっていくと考えられます。
なお、英国などでは、ありがとうThank youより、まず子どもに教えるのはplease(日本語では『どうか…してください』に近い)だと聞いたことがあります。
つまり、感謝よりお願い、謙譲語的なことをまず覚えろ、ということでしょうか。
なお、『ありがとう』とは、『有ること難し』がなまって『有り難し』→『ありがとう』となったと言われています。
つまり、滅多にないことだから『ありがたい』というのが通説です。
しかし、私はこの説に少なからず疑問を抱いています。
もっと言葉の根源的なものを疑っていますが、今はまだ、推理の根拠となる事実は見いだせていません。