さて、昨日七草粥の記事を書いたのですが、あるブロガーさんから、「春の七草は覚えやすいけど、秋の七草は忘れやすい」とのコメントがありました。
この理由は、春の七草がスーパーなどに並び、比較的目にする機会が多いこと以外に、私たちの使っている日本語と深い関係にあります。
静けさや 岩にしみいる 蝉の声
この俳句が、松尾芭蕉の作であることを知らなくても、聞いたことぐらいはありますよね。
また、小学校の同級生の名前は忘れてしまっても、こうした句は、一度聞くと結構よく覚えています。
なぜでしょうか。
俳句というのは、
5-7-5
の音からなっています。
日本人は、この5音7音で切れる言葉が落ち着くような脳をしているようです。
そして、この音の繰り返しを美しく感じたりします。
例えば、俳句や川柳の5-7-5だけでなく、
短歌 5-7-5-7-7
どどいつ 7-7-7-5
などがあります。
また、最近の歌はさておき、皆さんよくご存知の歌の歌詞は、大多数がこの5-7音からなっています(字足らず、字余り含む)。
春のうららの 隅田川 ……
春こうろうの 花の宴 ……
もしもし亀よ 亀さんよ ……
ね。こうした5-7音は日本人に馴れ親しみやすい音なのです。
さて、では春の七草を見てみましょう。
音が分かりやすいように、ひらがなで書いてみます、なお、「ぎょ」は1音扱いです。また、ハコベは七草の場合又は昔はハコベラと呼びます。
せり・なずな (5音)
ごぎょう・はこべら (7音)
ほとけのざ (5音)
すずな・すずしろ (7音)
きれいに、5-7音で分けることができましたね。
さて、次に秋の七草を見てみましょう。
秋の七草とは、萩・薄・葛・撫子・女郎花・藤袴・桔梗です。
これも、ひらがなにしてみましょう。
はぎ・すすき (5音)
くず・なでしこ (6音)
おみなえし (5音)
ふじばかま・ききょう (8音)
これも5-7音に近い並びですが、春の七草と比べると、その違いはよく分かると思います。
7音が無かったり、最後が4音で終わる文は不安定で、日本人にとってはどうもしっくりこないのです。
秋の七草が覚えにくい、大きな理由の一つを、日本語という観点から考えてみました。