その夜は、少女の家に泊めさせてもらうことになった。
タラノメやギボウシ、イタドリの味噌あえ、油炒めといった山菜とともに、ひどく硬く獣の臭いの強い肉がだされた。脂身からにじみ出る独特の味は、以前羽振りのよかった叔父が、東南アジアあたりで買ってきた、燻製のワニ肉に似ていた。クマの肉であるという。
老婆は、ランプの光がほとんど届かない土間で黙々と料理し、ただ「食ってみろ」とだけ言った。
少女はといえば、外にはまだ雪が残るというのに、浴衣姿である。しかも、相当丈が短い。傷口にばい菌が入らぬようにと、風呂には入らなかったようだが、薄化粧でもしているのだろうか。頬は薄桃色に光り、唇も淡い紅色に染まっている。
囲炉裏を囲んで食事をしながらも、浴衣から無造作にはみ出た白い足や、かがむ時にできる襟の隙間に、つい目が行ってしまう。
少女は、イワナを頭からかぶり付き、音をたてながら骨を噛み砕いた。
やがて尾鰭まで腹の中に収めた少女は、少女ではない潤んだ瞳で私を見た。
戸惑いと期待に、私の目が泳ぐ。
その目、口元、そして、もっと下の方。浴衣に曲線を与えている胸から腰。はみ出した膝頭、足首、そして、また頭の方へと、目まぐるしく視点が移る。
のぞき見することからくる、少なからぬ罪悪感以上の誘惑があった。
しかし、その時の私には、潤んだ瞳の中にある底知れぬ闇、逃れられぬ悲しみがあることまでは、到底うかがい知ることができなかったのである。
つづく