[連載]モウセンゴケ---サギーの末裔 第6話 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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「ばあちゃん、おらがタラッペ採ろうとしてケガしたとこを、この兄ちゃんが助けでくれたんだ。オラ今は何ともねえけど、兄ちゃんが、ここまで肩かしてくれたんだ」

「おめは、どごらへんケガしたんだ」

「ここだげど、もう何ともねえべ」

少女はそう言うやいなや、また、スルリとズボンを下げた。

私は、一瞬その肢体に目をやったが、すぐに老女の後ろの空間に目を移した。また、胸が早鐘を打ち始めたが、ゆっくりと息をし、平静を装う。

「おめえ、一人で血止めしたのが?」

「ああ、だども、この兄ちゃんが、谷さ落っこちるすんでのところで、引っ張りあげでくれだんだ」


「ほんじゃ、血止めすっとき、この兄ちゃんも一緒だったんだな」

「ああ、隣でずっと見てでくれだ」 

老婆は、一瞬鋭い視線を私に投げ掛けたが、やがて、粘りつく黄色い目を私の全身に絡みつけてきた。



心の中に、ひどくひんやりとするものが突き刺さった。


この老婆は、知っているのだ。 
あの時の、私の心を。 
そう思うと、隠すようにしていた鼓動が、外に漏れだすばかりに鳴りだし、耳から指の先まで、一挙に熱くなりだした。