少女に肩を貸しながら山を降りていった。
そのせいだけでなく、私は歩き辛かった。下半身が理性を無視し、本能に従っていたからである。
少女の家は、崖から2キロメートル程離れた、秋元湖寄りの峠付近にあった。山菜採りに来て、足を滑らせたのだという。あの場に私が通りかかったのは、幸運としか言いようがないが、少女が地元の出であることは、私にも幸いした。
もし、あの霧と残雪の中で道を失っていたなら、私の方こそ重大な事故に遭遇していたかも知れないからだ。
家が近づくにつれ、少女の口数が少なくなっていった。
霧は晴れ上がっていたが、山の早い夕闇が、雪の白さを浮き出し始めた。
しめ縄のような太いロープが吊り下げられた戸口の前で、少女は急によそよそしくなり、私を突き放すように後ろに追いやる。
少女は、大きく息をして、わざとらしい明るい大声をあげた。
「ばあちゃん、帰ったど」
少女が戸を開けたとたん、老婆の怒鳴り声が響いた。
「どごさ、行ってただ。お天道さんがかぐれるまで遊んでじゃなんねえって、何度言ったらわがんだ」
老婆は光る目で、少女にげんこつをくらわした。
が、すぐに少女を抱きしめて泣き出した。
「なあ、ばあちゃんに、あんまり心配かけねえでくろ・・・・・・」
そこで、やっと私の存在に気づいたらしい。
少女を突き放し、怒りとも、驚きともとれる目を私に向けた。
少女が、どう対応してよいのか判断しかねている私に助け舟を出す。
つづく