私は息を飲んだ。
長い冬を越し、ゴミをかき集めザラメとなった雪よりも、はるかに白く、きめ細やかな大腿がさらけ出されたのだ。
しかも、下着を着けていない。
申し訳程度に生えた、若草のような恥毛を、生まれて初めて見た私は、動転を通り越し、その微妙な起伏と渓谷をもつ、息付くような丘に、目が釘付けになった。
そんな私の存在など気にかけぬように、少女は傍らにあるヤブレガサの葉をもぎ取り、しごいてから膝頭に付けた。
右膝は赤紫に変色し、血がにじみ出ている。左の内腿には、何かが刺さったような跡があり、赤い液体がゆっくりと、若草の萌える谷の方へと伝わり流れていた。
少女は、またヤブレガサの葉を揉みしごき、その汁を左内腿の刺し傷に擦り込み、しばらくの間、そこを押さえつけていた。
その間、私は、まるで映画のワンシーンでも見るような面持ちで、じっと不安げにその仕草を見ているだけであった。
いや、この年になって嘘をついても仕方がない。
本当のことを言おう。
私は、そんなケガをした少女を前にしても、まだ、その優麗な曲線と渓谷の呪縛から抜け出せないでいたのである。
「こんな時に、何を考えているんだ」
と、頭ではわかっていても、私の目はいつの間にか、またその丘へ注がれていた。
さらに、あろうことか、少女を組み伏せ、木の葉に覆われた、二つの薄桃色の蕾を持つであろう山を征服する。
そんな妄想さえ、抱いていたことを告白しよう。
つづく