[連載]モウセンゴケ---サギーの末裔  第3話 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

しま爺の平成夜話+野草生活日記

世間を少しばかり斜めから見てしまうしま爺さんの短編小説や随筆集などなど
★写真をクリックすると、解像度アップした画像になります。

私は、悲鳴のした方角へ走り出そうとした。

が、一瞬ためらった。
そうでなくても、迷いやすい雪の道である。ガスに包まれた今、やっと見分けのつく登山道からはずれることは、あまりにも危険だ。先程から、足跡をたどって、引き返そうかと考えていたところだったからである。


左手前の斜面から、ウーンとうなるような声がし、ガサガサと草をかき分けるような音がした。


今度は、躊躇しなかった。


「おーい、大丈夫か。どっちだ?」

私は、声のした方向に向かって叫んだ。


「こっち」


女の声だ。

すぐ近く。
おそらく、10メートルと離れていまい。私の胸は、鼓動を感じられる程に、高く鳴りだした。


渓谷へ落ち込んでいくクマザサの生える斜面に、黄色い雨がっぱを着けた女がうずくまっている。


「そこを動かないで。今降りて行くから」

念のため、白樺の幹にロープをくくりつけ、ベルトに通して、下に降りて行く。


「僕につかまって」

「ううん、大丈夫だ。おら一人で登れっから」


やや訛りある、やや低い声。


女は、這うような仕草をした。

が、すぐにアッと小さく叫んで、顔をしかめた。


「無理をしないで。ほら」


右手はしっかりとロープをつかみながら、遠慮がちに、左手を女の方へ伸ばした。


今度は、女も素直に助けを受け入れた。


女は、まだ十五、六の少女だった。 
が、当時の私にとっては、同年の異性以外の何ものでもなかった。


言葉使いに反して、大きな目をしたエキゾチックな顔だち、長い髪を見たとたん、私は、救出者以上の何かを感じ始めていた。





「ああ、いでえ(痛い)」



女は、しばらく膝頭をさすっていた。


が、


なんと、




急にズボンを下げたのである。




     つづく




----------------


注意

これは、架空の小説ですから、『私』とは、しま爺のことではありません。


また、次回から、かなりきわどい表現が出てくる可能性があります。

妖しい表現が嫌いな方は、次回はスルーした方がいいでしょう。
また、想像力がありすぎる方も、やや危険かもしれません。