
これは厳しい質問だ。
いつまでたっても、どんなに頑張っても大人になれない私には、泣ける問いである。
天竺ネズミに、大きくなったら、象のお嫁さんになる、それともライオンの方がいい?
と聞かれて、何と答えたらよいのだろうか。
だいたいにして、子どもと大人の違いが、よく理解できていない私には、この質問に答えられるはずがないのである。
と、悩んでいたところに、救世主が現れた。
昨日は雨模様だったから、あまり遠くまでは散歩には行かずに、パラッときたらすぐ雨宿りできそうな街中を歩いていた。
案の定、細かい雨粒が落ちてくる。
駅前にあるチェーン・コーヒー店に入った。
ブログを覗き始めてまもなく、面白い二人が店にやってきた。
十年ほど昔、一世を風靡していた、タヌキタイプの小太り、丸顔の老婦人と、キツネタイプ、体重38kgぐらいの中年婦人である。
さして広くない店の中で、二人の漫談が始まる。
私とその二人組の間は、約5m。
そのあいだに、他の客はいない。
二人はまるで、私にネタを与えてくれるかのように、10m以上離れた人でも、話している内容がわかるくらいの声で、熱演会を始めてくれた。
タヌキ婦人が突っ込み、キツネ婦人は聞き役である。
その打打発止は、まさにプロ級。
あまりのテンポの良さから考えるに、あの二人組は、次の演芸のリハーサルを、現場練習していたのではないか、とさえ疑りたくなるような、それほど話によどみがなく、突っ込みに対する聞き役の対応が、適切過ぎるのである。
登場人物について、あと少し詳しく説明しよう。
老婦人は、水商売をしながらも、ウーロン茶飲み大学で学んだ苦労人。(本当はお茶の水大学なんだそうだが、他人には明かさない、貴女にはだけ教えるわ、と店中に響きわたる声でお話しされていた)
かつては、相当裕福な時もあったようだが、良夫に先立たれた現在は、便利屋さんのような仕事で、即時現金収入の生活を送っている。
時折、フランス語スラングらしき言葉が出てきたところや、その他諸々を考えると、横浜の船員相手の商売をしていた、という役である。
どうも、最近は、肉体的なもの以外にも問題があり、通院しているようだ。
一方、キツネ婦人も今は一人身らしい。
次から次へと
話題が変わるタヌキ婦人の、聞き役としての頷き、陂の打ち方は、芸術的とさえ言えた。
二人が店に来て、ちょうど60分。
聞き役の声が、急に空っ風に変わった。
そろそろ、時間ですが。
あらっ!
ホントね。もう1時間たっちゃったのね。
あの、これからウィンドウショッピング行かない?
よろしいですが、カウンセリング追加で、料金25%アップしますが、いいんですか?
もし、あれが大人の世界なら、やはり私は、大人になれそうにないのである。