
最近は、床暖房や室内ヒーターに圧され、すっかり影が薄くなってしまった感のあるこたつ。
この、こたつと言う暖房器具は、日本独自のものばかりか、日本、日本人の成り立ちや考え方に、大きな関係があることを知っていますか。
日本という国は、四方を海に囲まれています。
皆さんがよく知っている国を、ちょっと思い浮かべてください。
まずは、ヨーロッパからいきますか。
フランス、ドイツ、イタリア、イギリス、スウェーデン、スペイン、ポルトガル、ギリシャ・・・。
どの国をみても、目には見えない国境が、地続きの土地の中にあります。
えっ?
イギリスは、日本と同じく四方を海に囲まれた島国ですって?
とんでもありません。
確かにグレードブリテン島の周りは海ですが、その西にあるアイルランド。この島の北の方はやはりイギリスでアイルランドとの間に国境があります(これに関しては微妙な問題がありますが、日本の世界地図に従います)。
アジアなら、中国、韓国、ベトナム、タイ、マレーシア。インド、ブータン、バングラデシュ。
シンガポールは島国ですって?
確かにね。
でも、東の端から西の端まで、高速飛ばせば一時間弱、ジェット機なら60秒の国だし、お隣のマレーシアへは、北島選手なら、私がこのブログ書き終えるまでに、泳ぎ渡ってしまう。
ああ、面倒だ。
とにかく、アメリカの国々だろうと、アフリカの国々だろうと、ほとんどの国は、同じ土が続く所に、国境がある。
こうした国々では、いつ敵が攻め込んで来ても不思議ではない。
そのため、寝る場合も、すぐに臨戦体制がとれるようでなければならない。
ベッドというのは、そうしたことから発明された寝具だ。
布団では、起きてから立ち上がるまでの時間がかかりすぎる。
また、布団をたたむような悠長なこともしていられまい。
“こたつ”とうのも、これと同じように考えれば、日本に特有のものであることがわかるでしょう。
ストーブというのは、立ったまま、または、椅子に座ったりしてあたるものです。
だから、いつでも臨戦体制です。
ところが、こたつは、どっかり座り込み、いざ鎌倉という場合に出遅れます。
つまり、こたつというのは、日本のように平和な国にしか、存在しえないのです。
また、こたつは動物の行動にも影響を与えます。
本来、犬と違い野性的で人とは一線を画すはずの猫が、人にベッタリし、こたつで丸くなったりするからです。
人の結婚率と強い相関があることは、拙著『こたつ-身近な甘い密室』を参照ください。
こたつが、日々マイナー街道を下っています。
これと同時進行するように、日本でも独身者が増えているのは、今更説明の必要はありませんよね。
私は、こたつにもう一度日が当たることを、切に望むのであります。
もっとも身近な、どこか謎めいたところのある、甘く妖しい空間として。