芝神の都瑠香 17 (最終回) | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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「わらわが、このわらわが、女ではないと言うのか」


護魔壇の中の麻炭が崩れ、一時炎が上がる。


「許せぬ」


都瑠香は、衣を護魔壇に投げ入れた。


一瞬にして炎がたち、仏壇をメラメラと燃え上がらせる。


火を消そうとする最仁を、柔肌が羽交い締めにする。

険しゅんな山谷を駆け、傀儡(くぐつ)独自の締めつけをする女の力が、最仁のそれを上回った。


円林寺が、紅蓮(ぐれん)の炎に包まれていく。



白無垢の世界が、ゴーゴーという音とともに、橙、黄色の炎に焼かれ、灰色の奈落へと落ちていく。



その炎の中から、甲高い女の声が聞こえてくる。


「わらわは、ドルガ。わらわになびかぬ男はいない。わらわに触れとうない男はいない。わらわこそ、女の中の女」







その声も、紅蓮の炎の音にかき消され、やがて聞き取れなくなっていく。



「わらわは、ドルガ・・・。


女の中のおんな・・・」


もう、ひとたび、

そんな声がしたようだ。





高遠・円林寺、サバ祭



最後の夜の出来事である。




   おわり