芝神の都瑠香 14 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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高遠の冬は厳しい。

が、

奥の院へ近づく女は、丈の長い浴衣のような橙色の衣を身につけているだけである。


しかも、その衣は絹ででもできているのだろうか。


柔肌が、透けて見えそうだ。

程よく膨らんだ胸の先には、寒さ故にか、硬く尖っているグミがはっきりと見てとれる。


夏の夕暮れにでも見たなら、また、その衣の色が白かったなら、話に聞く天女と間違えられもしよう。

今の季節だと、火の国から来た雪女といったところだろうか。




雪の静寂の中に、女の激しい息音だけが伝わってくる。


その翡翠色の目の中には、緋色の炎が燃え、どんど焼きさながら、氷世界の夜を焦がしている。