高遠の冬は厳しい。
が、
奥の院へ近づく女は、丈の長い浴衣のような橙色の衣を身につけているだけである。
しかも、その衣は絹ででもできているのだろうか。
柔肌が、透けて見えそうだ。
程よく膨らんだ胸の先には、寒さ故にか、硬く尖っているグミがはっきりと見てとれる。
夏の夕暮れにでも見たなら、また、その衣の色が白かったなら、話に聞く天女と間違えられもしよう。
今の季節だと、火の国から来た雪女といったところだろうか。
雪の静寂の中に、女の激しい息音だけが伝わってくる。
その翡翠色の目の中には、緋色の炎が燃え、どんど焼きさながら、氷世界の夜を焦がしている。