
「シャネルNo.5よ」
と答えたのは、モンローだ。
それなら私は、
「ボロを身に纏い、希望を抱いて寝る」
とでも言いたい。
しかし、こんなこと言えるのは、私が年をとり多少のことには動じなくなったか、未だに現実を理解できぬアホな万年青年か、あるいはボケたためだろう。
とにかく、客観的に見たら、今ほど経済的にも精神的にも厳しいことはなかったはずだ。
若い頃にも、おそらく、そう多くの人は味わったことはないであろうと考えられる壮絶な時期があった。
が、それには多くの方が関わっていたにも拘らず、ある意味では、私自身の内部改革だけで、かなりの部分を解決できるところがあった。
それに比べれば、今の悩みなどは“小さい、小さい”という自分がいる。
が、その一方で、そのゴミ粒にもならぬ経済的な圧迫が、
重く、
しんしんと、
氷より冷たく、
かまいたちの如く音もなくすぱりと、
私、私たちを
襲ってくる。
私は、貧しさの中に楽しみを見つけられるようになりつつある。
が、けして裕福ではない田舎育ちの私でさえ、味わったことのない思いを、遅くに結婚したが故に、まだ未成年である子どもたちに与えてしまっている自分が、情けなく、息子たちが不憫に思われるばかりなのである。
許せ、息子たちよ。