「誰かぁ、助けてたもっ」
女の悲鳴が谷にこだました。
がさがさと薮をかき分ける音がして、数人の若衆が現れた。
女、都瑠香の父親傘下の傀儡師(くぐつし→芝神の都瑠香1参照)たちである。
若者たちが、皆が一瞬、これ以上にないほど目を見開き、唾を飲む。
女は左手で胸をかばいながら、右手を杣道を行く最仁を指した。
「あの男が、
あの男が、わらわを・・・」
そう言うと、
女はその場に座り込み、低い嗚咽を漏らし始める。
「うううっ」
男たちは、嫉妬にも似た怒りを顕にし、
最仁を追い、
一斉に飛びかかっていく。
男たちの、女を襲った者への報復以上の蹴りが、四方八方から最仁の腹に、背に浴びせかかる。
最仁は、体を海老のように曲げ、なされるままである。
「止めぃ」
太い声がした。