芝神の都瑠香 9 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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「誰かぁ、助けてたもっ」




女の悲鳴が谷にこだました。



がさがさと薮をかき分ける音がして、数人の若衆が現れた。
女、都瑠香の父親傘下の傀儡師(くぐつし→芝神の都瑠香1参照)たちである。



若者たちが、皆が一瞬、これ以上にないほど目を見開き、唾を飲む。


女は左手で胸をかばいながら、右手を杣道を行く最仁を指した。




「あの男が、

あの男が、わらわを・・・」




そう言うと、



女はその場に座り込み、低い嗚咽を漏らし始める。





「うううっ」


男たちは、嫉妬にも似た怒りを顕にし、


最仁を追い、




一斉に飛びかかっていく。



男たちの、女を襲った者への報復以上の蹴りが、四方八方から最仁の腹に、背に浴びせかかる。




最仁は、体を海老のように曲げ、なされるままである。






「止めぃ」



太い声がした。