「わらわの、
このわらわのどこが醜いと言うのじゃ。この体のどこが病んでいると言うのじゃ」
女は羽織っていた薄衣(うすきぬ)を脱ぎ捨て、バシャッ、バシャッと沢水を蹴散らしながら最仁のいる岸へ突き進んでくる。
と、後ろ姿になった最仁の袈裟を、むしりとらんばかりに引っ張った。
女は最仁の手をわしづかみにすると、その手をおのが胸の膨らみに押しあてたのである。
「ほれ、柔らかいであろう。
もそっと触れてもよいのじゃぞ。
いな、
吸うても」
女は自分の発した言葉に自ら酔ってしまったかのように、目が宙をおよぎ、頬に紅が射した。
「色即是空
空即是色」
最仁は一瞬こわばった表情をみせたが、すぐに平成に戻り、また、同じ言葉を繰り返す。
「色 即 是 空
空 即 是 色」