続 イサク | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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本来、イサクの話は一回ポッキリの予定だったのですが、皆様?(わずか1名様なのに、皆様はないだろう!との声が聞こえてきそうな)のご希望にお応えし、続編を書いていきましょう。


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イサクは、時々わけのわからぬことを口走る。



例えば、本当に日本を動かしているのは大臣や経済界の重鎮と呼ばれる人たちではないとか、異常気象や地震予知に関心があるなら、大学の研究所や気象庁のホームページを開くのではなく、保険会社の株価を見ろ、とかいったことなどである。


政治や経済に関心のない私には、一体何を言いたいのかわからぬから、イサクに詳しいことを聞いてみても、のらりくらりとした答えに始終し、さっぱり要をえない。




国を動かすのが政治家や経済界ではないなどというのは、推理小説の読みすぎか、単なる彼の妄想だろう。



黒幕だのフィクサーだのといった存在を、私は感じたことがない。


が、それは、私の経験不足かも知れない。


一時とはいえ、私には彼のように時代の風雲児とか言われるような高みに登ったことがないからだ。


だから、イサクの言うことを素直に聞くことができない私の方が間違っているのかもしれない。



しかし、天災の予測と保険会社の株価の関係となると、私にはさっぱりだ。



だいたい株安とか円高とかが、どう日本と係わり、どうなるかがさっぱりわからない。


もっとも、昼は上野駅、不忍池の階段でひたすら待つだけの似顔絵描き、夜は都立美術館前でチゴイネル・ワイゼンをぎこちなく弾く私には、株価とか円高円安とかより、奇特な人の心を形にしたものの方が、ずっと関心がある。




それも、チャリンという甲高い音より、静かに手渡されるややごわつきのある紙の方が、はるかに心をはずませてくれる。




おっと、いけない。



イサクの話をするはずだったのに、私の独り言になってしまった。









というところで、電車を降りるべき駅に近づいた。




また、気が向いたら、今度はイサクについて語ろう。