芝神の都瑠香 5 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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女の大きく開かれていた目が細長になった。


そこから放たれていた、痛いほど力ある直線的で青い光が、分散、湾曲し浮遊する灰色に変わる。


しばしの、


沈黙の時が流れた。


沢音が、一層静寂を強調する。


その透明で体を圧し潰していく空気を、

甲高いな声が突き破った。

「男」


「何をぶつぶつ言っておる。無理などせず、早よう近こう寄れ」



「拙僧は仏に仕える身。既に、俗世を捨てておる。もし、拙僧がまだ憂き世に未練があらば、言われずともそちを押し倒していよう」



「まだ、わからぬことを言っておるのか。本心は、わらわに触れとうて仕方ないのであろう。だから、ぬしはわらわをを見てなにやら神にでも祈ったのであろう」 


女はまた目を細め、身をよじりやや上目遣いに最仁を見る。


その三日月のような眼から、神無月の鈴虫の音(ね)に似た光が放たれている。