「南無阿弥陀」
驚嘆とも称賛ともとれる低いうなり声のようなあと、最仁は念仏を唱えた。
「男・・・・・・、」
女が威嚇するような声を発する。
体の向きを元に戻した女は、青緑色をした瞳の奥から、また青紫色の光を放つ。
盛り上がった双つの毬(まり)の先には、触れる風の冷たさ故にか、固さを増し輪郭を明瞭にした桃色のヤマグミが、その存在を誇示している。
「男、ぬしは何をしておる。このわらわの肌をもそっと近くで見とうはないのか。わらわに触れとうないのか」
女は淀みから上がり、薄紫の衣に袖を通した。
濡れた体の雫を吸い、優麗な曲線と胸板の突起が強調され、先ほどより一層色香が漂っている。
「南無阿弥陀」
最仁は、また、念仏を唱えた。
「男、無理するでない。早よう、近こう寄れ。もそっと良く見たかろう。わらわに触れたかろう。だから、ぬしはわらわの体を見て、ぬしの神に祈ったのであろう」
「娘子よ。もそっと、そなた自身をいたわりなされ」
最仁は、初めて言葉らしい言葉を発した。