私はとぼけてみせる。
「もう、鈍感なんだからぁ。あのね、わたしの本当のパパはね、わたしが小さい時なくなっちゃったの。で、今はママ一人。ママはわたしの前じゃニコニコしてるけど、本当はすごく淋しがりやなのよ。だから、ママを助けて欲しいの。ううん、わたしもパパが欲しいの。だから、ね・・・・・・。ずっとじゃなくっていいのよ・・・・・・。ここにいる時だけ!」

少女は、ひどく大人びた笑みをうかべ私に攻めよってくる。
子どもというのは、なんと短絡的で楽天的でもあるのだろう。
私は少女の運命を哀れとは思いつつも、半分あきれ顔で少女を見た。
が、
その一方で、網膜にしっかりと焼き付けられた少女の母親の憂いある眼(まなこ)から逃げられない自分が、
そこにいた。
実のところ、私はその写真の主に、ぐうの音もでないほど打ちのめされていたのである。
「何をバカなこと考えているんだ」
そう自分を叱咤しつつも、ひどく自分勝手な、甘い期待に酔いしれそうになるのだ。
おそらく、昼間からアルコールが入ったせいだろう。
「ねぇ、ねぇ、いいでしょう。おじさん。ううん、パパ~」
少女の顔や声が、だんだんとネコになっていく。
と、
★続く