クルンテープ(天使の住む都) 7 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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「言っていることがわからないなあ」

私はとぼけてみせる。

「もう、鈍感なんだからぁ。あのね、わたしの本当のパパはね、わたしが小さい時なくなっちゃったの。で、今はママ一人。ママはわたしの前じゃニコニコしてるけど、本当はすごく淋しがりやなのよ。だから、ママを助けて欲しいの。ううん、わたしもパパが欲しいの。だから、ね・・・・・・。ずっとじゃなくっていいのよ・・・・・・。ここにいる時だけ!」



少女は、ひどく大人びた笑みをうかべ私に攻めよってくる。





子どもというのは、なんと短絡的で楽天的でもあるのだろう。


私は少女の運命を哀れとは思いつつも、半分あきれ顔で少女を見た。



が、




その一方で、網膜にしっかりと焼き付けられた少女の母親の憂いある眼(まなこ)から逃げられない自分が、


そこにいた。


実のところ、私はその写真の主に、ぐうの音もでないほど打ちのめされていたのである。



「何をバカなこと考えているんだ」

そう自分を叱咤しつつも、ひどく自分勝手な、甘い期待に酔いしれそうになるのだ。


おそらく、昼間からアルコールが入ったせいだろう。



「ねぇ、ねぇ、いいでしょう。おじさん。ううん、パパ~」


少女の顔や声が、だんだんとネコになっていく。




と、


  ★続く