クルンテープ(天使の住む都) 2 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

しま爺の平成夜話+野草生活日記

世間を少しばかり斜めから見てしまうしま爺さんの短編小説や随筆集などなど
★写真をクリックすると、解像度アップした画像になります。

まだ中学生にはなっていないと思われる、鼻の周りにやや目立つソバカスのある少女。


それが声の主だった。どこか、子役時代のテータム・オニールに似ている。
が、パッチリした目の奥の色が、日本人であることを主張していた。





「おじさん、日本人でしょ」

「うん、そうだよ」
「こちらへどうぞ」

少女は、常連客を迎えるチーママのごとく、自然に私の手をとって窓際の席へと導いた。

「ほら、ここからなら、サクラがとってもよく見えるのよ」

少女は、私の視線を外へと促す。



確かに、葉一枚なく、ぎっしりとピンクの花をつけた木がある。
が、その花は一つがテニスボールくらいあるものだ。枯れ枝に、芙蓉の花をちりばめた感じである。

もちろんサクラではない。しかし、遠目に見れば、満開のサクラにも見えなくもない。


「おじさん、何にする?そうそう、まずはビールよね。ハイネケンでいいでしょ。それと、ミューニッヒ・ソーセージね」


少女は、初めての客である私におくすることなく、よどみがない。