さあて、きのうはどこまで話したかいの。
ん?
ほう!
ふむ、ふむ。
そうじゃった。
日本には唯一絶対の神様がおらんから、クリスマスを祝ったあと一週間もまたずに、今度は除夜の鐘を聞きにお寺さんに行き、その足で神社に初詣するところまでじゃったな。
十日の間に、キリスト教から仏教、さらに神道。
まあ、世界を探しても、こんなに目まぐるしく祝ったり祈ったりする神様、仏様が違う国はないだろうよのう。
なに?ジジイは、そんなことまでは話していなかったてか。
ほう、そうかい。じゃが、まあ、五十歩百歩のことは言うたろうて。
ちぃいとばかり話がそれちまうが、日本つう国は、ほんまに不思議の国なんじゃよ。
あんたら若いもんには、何を話しているか、とんちんかんかも知れんが、この国はな、決して一つの色には染まらんのじゃよ。
仏さんにしろ、イエスさんにしろ、はたまた、ずっーと昔この国にやって来た天照大神はんにしろ、この国を絶対的には縛ることはできなかったじゃろが。
まあ、こりぁ日本つう国の成り立ちとも関係があるんじゃが。、
うーん、この話はよしとこ。長ーい、長ーい話になって、若いもんにゃ、寝物語にしかならんじゃろし、
どうせ話したところわからんじゃろから時間の無駄やろからな。
ただ、これだけは知っておいてくださんせ。
さっきの話の繰り返しになるがの、
卑弥呼やら応神やらの時代にやって来た天照はんにしろ、聖徳太子の頃訪れた仏さんにしろ、あるいは織田信長の時代からペリーの黒船の時代、そして今も、日本にやって来ているイエスさんにしろ、みーんな日本つう国に食われちまったんじゃよ。
えっ?
食われちまったっていうのは、変だってか?
わかんねえかのう。
早い話が、日本人には常に敬い恐れる神や仏としてじゃのうて、八百万の神々の一人として、都合の良い時だけお出ましいただけば十分という存在で受け入れられとるつうことよ。
三三九度して、神前で結婚の式をし、ウェディングドレスに着替えケーキカットして、家に帰ったなら、仏前でご先祖様に報告する。
こんなことは、日本人には何ら違和感がないわな。でも、一神教の人らからすれば、こんなことすることはとんでもない神への冒涜じゃろな。
なにをボケーっとしておる。
なに?
何を話しるのかわからんというのか。
そうか、それならば、もっとわかりやすい例えにしようかの。
ええか、モヒカンカットの頭で、スーツを羽織り、袴をはいた長靴男の姿でも想像してみいや。
何を笑っておる。
アリエネエってか。
じゃがな、それが多くの外国の人々が感じる日本人よ。
いや、いや、勘違いしちゃ、いかんぞ。ジジイはそれが悪いなんぞとは一言も言っとらんし、思ってもおらん。むしろ、その間口の広さを誇りにさえ思っているぐらいじゃわ。
ほいな、また、話が第三次世界大戦から離れてしまったのう。
それじゃあ、今度こそ本題に入りますぞ。
あれれ、ごめんよ。今夜はとらきちばあさんと般若湯を約束しておるのを忘れとった。
続きは、また明日の晩じゃ。
ほいじゃあな。
今夜は月がないから、足元気をつけて帰るんじゃ。
ではな。