禁断の実 5 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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その頃、神の申し子イッシャ・ナミは、バナナの葉で覆われた家の中でひたすら地に頭をつけて祈っている母や姉妹を横目で見ながら後退りし、体を少しずつ出口の方へ移していった。
「なぜ女が見てはいけないのだろう。父は言っていた。ジャガー神が昼に現れるのではない。本当は月が太陽を覆い隠すのだ。すべては、天の運行から決まっていることなのだ、と。ならば、それほど恐れることもあるまい。女、子どもが外にさえ出てはならぬのか。いや、なぜそのものを見てはいけないのだろうか」

イッシャ・ナミは、ついに家から抜け出した。
今まさに暗闇が全天を覆おうとしている。頭上には降ってきそうなほどに星が輝いている。一瞬、あたりが薄桃色に光ったような気がした。太陽を見る。そこに光輝いていたであろう今は黒い太陽から、薄靄に似た真珠色の淡い光が幾筋も放たれているのだ。
「なんて美しいんだろう。どうしてこんな美しいものを見てはいけないんだろう。いや、あまりに美しいから王は見ることをタブーにしたのだろうか」