禁断の実 1 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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村の中央には聖人カミィーのピラミッドがあり、その階段の左手にはドクロと呼ばれる木が植えられていた。幹には大小さまざまな瘤がある。それはまるで、幹から人の頭が生え出てきたようにも見える。ドクロの木の由来だ。
毎年ジャガー神、つまり夜の太陽が最も短い旅をする頃、深紅の五弁の花が咲き、やがてこぶしほどの実が鈴なりになる。実の色は黄から赤へと変わり、所々に黒い斑点が浮き出てくる。赤と黒の入り混じった果実は、サンゴヘビの肌のようだ。隣村の者たちは、ジャクロと言うが、これはドクロがなまったためではなく、蛇黒からきているのかも知れない。
この頃になると雨の季節はすっかり終わりを告げ、新たに巣立ったハチドリたちが伴侶を求める旅に出て行く。
やがて、ドクロの実は先端が裂け、赤紫のゼリーで被われた無数の種子を露出する。それは切り開かれた肉肌を想像させるのだった。
村には『ドクロの木の実を食べてはならぬ』という掟がある。なぜかは知らぬ。ただ、それをしてはいけない。
それが掟というものだ。