不正競争防止法2条1項1号の裁判例をよむ

個人的興味からのランダムピックアップ裁判例 その78

 本日は、使用許諾関係にあった当事者の紛争事例を見ていきます。

 本裁判例は、LEX/DB(文献番号27486089 )より引用。形式的な修正追加あり(「」等で明示ない箇所もあります)。

 

  神戸地判昭53・1・25〔ユーハイムコンフェクト事件〕昭46(ワ)35

原告 株式会社ユーハイム
被告 株式会社ユーハイム・コンフエクト

 

■事案の概要等 

 本件は、他人の商号・商標に類似するものとしての商号・商標の使用許諾を受けているときは、営業主体・商品主体の識別保持の機能上の性質からくる、使用態様上の制約が存するが、被告の「ユーハイムコンフェクト」の使用態様が原告の商号・商標の「ユーハイム」との関係において、なお許諾の範囲内にあるものとして、使用差止の請求が棄却された事案です。

 

■当裁判所の判断

(下線・太字・着色筆者)

 

第一 第一次請求について

Ⅰ.当事者間に争いがない事実
 裁判所は以下のように認定し、判断しました。

(1)原告は、昭和25年1月31日、株式会社ユーハイム商店として設立登記され、その後、商号を株式会社ユーハイムと変更し、また、昭和26年6月14日、登録番号第399588号(指定商品:菓子及び麺麭)に「Juchheim’s」(ドイツ人ユーハイムの名を図案化した花文字体、以下これを「花文字体ユーハイム」という。)なる商標の登録を得(但し、昭和46年6月24日期間満了により消滅同年7月8日抹消登録)、更に、昭和29年1月13日、登録第437674号(指定商品同上)に「花文字ユーハイムユーハイム」なる商標を前記第399588号の連合商標として登録を得、肩書地に本店を置き、洋菓子一般の製造販売を業としている。
・被告は、昭和26年4月23日、本店を神戸市生田区三宮町二丁目一番地に、支店を同町二丁目三二番地の一に置き、株式会社ユーハイム・コンフエクトとして設立登記され、その後、肩書地に本店を移し、右従前の本店を支店として、洋菓子一般の製造販売を業としている。
 

(2)原告は、被告に対し、昭和26年10月5日、当庁に商標使用禁止の仮処分…を申請して認容決定を受け、原告は、被告に対し、その製造販売にかかる菓子類及びその容器、包装紙等並びにその営業に用いる看板等に商標として「ユーハイム」なる名称を使用してはならないとの趣旨の本訴…、及び被告はその商標に「ユーハイム」なる文字を使用してはならない。被告は…「株式会社ユーハイム・コンフエクト」なる商号の抹消登記手続をせよとの趣旨の本訴…をそれぞれ提起し、その後、右訴訟係属中の昭和30年4月23日右各本訴において、原・被告間において本件和解が成立したこと。
 

(3)被告は、本件和解成立後もその経営する洋菓子販売において、「ユーハイム・コンフエクト」を商号又は商標として使用するに当り、その表示の場所、物件において…縦書の場合には一行にして「ユーハイム」と記載し、それに小さく「コンフエクト」と続け、横書の場合は、横一行に、直線に、或は湾曲して「ユーハイム」と書き、それに小さく「コンフエクト」又は「・コンフエクト」と続け、二段書きする場合には「ユーハイム」の下段に行をかえて小さく「コンフエクト」と記載するなどの方法で本件第二表示と同じ様な態様でこれを表示し、現在に至つていること。

 

 

2.本件第二表示※ないし本件大小・二段書き表示が本件和解に違反するか

(※、別紙(一):上記(3)のように、「ユーハイム」と「コンフェクト」を上段下段に分けたり、大小差をつけたりする使用態様の表示)
 裁判所は、認定の紛争実情、訴訟提起より本件和解に至るまでの経緯、並びに本件和解条項を総合すると「本件和解は長期間に亘る当事者間の紛争を抜本的に解決することとし、基本的には原告は被告に対し紛争の原因となつた「ユーハイム」と「コンフエクト」より成る商号、商標を認めることにあった」と認定し、以下判断しました。

 

(1)「そこで、本件和解においては、原告は被告に対し、

被告が、(イ)「株式会社ユーハイムコンフエクト」なる商号を使用すること、

(ロ)片仮名文字の「ユーハイム・コンフエクト」並びにローマ字による商標(ローマ字については書体を別紙(三)(ロ)記載のとおり限定)を使用することを認める反面、

右(ロ)以外の商標、特に、原告の登録商標「花文字体ユーハイム」と同一又は類似の商標の使用を禁ずるとともに、「ユーハイム・コンフエクト」の使用の対価として金120万円を支払うことを骨子として成立したものであり、そして、

本件和解条項においては、被告がその商標「ユーハイム・コンフエクト」をローマ字で表示する場合についてのみ特にその表示態様を別紙で限定し、また、被告に対し使用を禁止する原告の登録商標「花文字体ユーハイム」についてもこれを別紙に明示しているにも拘らず、右以外には商号、商標に言及した条項が存しないこと、及び原告が被告の「ユーハイム・コンフエクト」なる片仮名による商標登録につき現に特許庁に申立てている異議を取下げる旨、約したこと等から考える」と、

本件和解の主旨は、原告は被告に対し、片仮名「ユーハイム・コンフエクト」を商号、商標として使用することを許諾した点にあり、そして、

その使用許諾については、その書体、「ユーハイム」と「コンフエクト」の文字の大小書き、二段書きの禁止等、表示態様については特に制限が付せられなかつたものと解するのが相当である」

本件和解の原因となつた仮処分およびその本訴に先立つて被告がユーハイム・コンフエクトの二段書き、大小書きの表示方法をとつていたことから原告はこれが禁止を求め、被告はいわゆる先使用権を主張していたものであり、この二つは重要争点となつていたのであつたから、若し、片仮名「ユーハイム・コンフエクト」の使用許諾において、その表示方法として大小書き、二段書き表示を厳禁する趣旨であつたなら当然和解調書に明示されていたものと解せられるところ、

かかる明示の条項もなく、更に前記のとおり本件和解に至る紛争の実情、経緯、本件和解の趣旨等その他諸般の事情を考えるも右表示について特に制限が付せられていたものと認めることができないところである。

本件和解条項第一項に、「ユーハイム・コンフエクト」と縦一行に書かれてあるからといつて、これをもつて直ちに、原告主張のいわゆる一連不可分に書くことを限定したものと見ることは出来ず、又、

本件和解の別紙にYUHAIMU CONFECTと横一行に書いてあるからといつてこれを以て、同様、右一連不可分の表示に限定したものと解することは出来ないところである」。
 

(2)裁判所は、さらに、「本件和解の主旨は、原告が被告に対し、片仮名「ユーハイム・コンフエクト」を商号、商標として、その表示につき格別の制限を付することなく許諾した点にあるが、これを法律的に見ると、商標について言えば、原告の商標権にもとづく禁止権の放棄をしたものと解するのが相当である」とし、すなわち「原告は本件和解当時、前記のとおり、登録番号第399588号の「花文字体ユーハイム」とこれの類似商標である連合商標第43764号の「ユーハイム」の二つの登録商標を持つていたのであり,被告は、当時「株式会社ユーハイムコンフエクト」の商標登録出願中であり登録がされていなかつたのであるから、原告は右商標権にもとづき「ユーハイム・コンフエクト」の表示がその類似範囲に属すると認められるならばその使用を禁止する権利を有していたのであるが、原告は、本件和解により右商標権にもとづく禁止権を放棄しその類似範囲に属する「ユーハイム・コンフエクト」の使用許諾を認めたものと言うべきである」と判断しました。

 

 そして「本件和解条項第一項の「商標の使用を認める云々」の使用を認める文句は禁止権放棄と表裏の関係にある使用許諾の面からこれを現わしたものと解するのが相当である」とし、「蓋し、商標権者は登録商標と同一商標については使用権を専用しかつ禁止権を有するも、その類似範囲においては使用権を有せず、唯、事実上これを使用しうるに過ぎないが、然し、他人の使用についてはこれが使用を禁止する権利を有するからこの禁止権を行使することによつて他人の使用を差止めることができ、第三者は商標権者の禁止権の行使によつて類似範囲の使用ができないことになる。従つて、商標権者が類似範囲の商標使用者に対して禁止権を放棄することは、その使用者については、その類似商標の使用について商標権者から使用許諾をうけた関係と同様のことを意味するからである」としました。

 

 さらに、裁判所は「被告は、「ユーハイム・コンフエクト」のいわゆる先使用権を認めた趣旨に解すべきであると主張するも…本件和解及びその本訴において、被告は先使用権を主張し、これが重要争点であつたことは認めうるところであるが、先使用権を認める趣旨の文言の記載もなく、又、前記認定の本件和解の趣旨、経緯等諸般の事情を考えても本件和解によつて被告の「ユーハイム・コンフエクト」についていわゆる先使用権をも認めた趣旨に解することは出来ない」とも判断しました。

 
 ところで、「原告は、仮りに明示の条項がないとしても、「ユーハイム・コンフエクト」は結合商標であり、一連不可分に結合されてその構成要素となつている「ユーハイム」との類似性を失うものであり、大小書き、二段書きを許すことは「ユーハイム」なる呼称を許したと同様になることは商標法分野における経験則上明らかであり、本件使用許諾において原告は被告に対して「ユーハイム・コンフエクト」の使用を許諾したのであり「ユーハイム」の使用を許諾したものではないから「ユーハイム・コンフエクト」と一連不可分に表示することが前提となつていたものである」と主張する点に関し、裁判所は以下のように判断しました。
 

 すなわち「いわゆる文字と文字の結合商標の場合において、構成要素の文字の大小、二段書き、着色の有無その他結合方法如何によつて構成要素の商標と類似性を有し、或は類似性を有しなくなるものであり、これを一連不可分に表示すれば構成要素である商標との類似性を失わせ、自他識別の機能を保持するものであることは否定できない」が、

本件は「片仮名文字で表示する「ユーハイム・コンフエクト」について特に表示方法の制限が前提であつたものとは認められざるのみならず、結合商標におけるいわゆる一連不可分の表示は結合商標の類否の問題であるところ、本件においては、原告の登録商標と類似範囲にあるとする「ユーハイム・コンフエクト」を使用許諾した場合であり、このように使用許諾により類似商標の問題のある商標の使用から生ずる或る程度の出所の混同誤認を承認した関係にある場合においては、既に右の如く登録商標について「ユーハイム」と「コンフエクト」より成る表示の限度で類似範囲の使用を認めているのであるから、結合商標のいわゆる一連不可分的表示によつて登録商標と非類似の商標とするということは必ずしも前提となつていないというべきである」。
 

「被告は、本件和解後の昭和30年6月29日、「株式会社ユーハイムコンフエクト」の商標登録(出願昭和26年11月30日、公告昭和27年11月19日)をうけ、更に、昭和33年7月30日「KK.YUHAIMU CONFECT」の文字商標、及び人形図形の登録を得ていること、一方、原告は、本件和解後の昭和46年7月8日、登録番号第399588号の花文字体ユーハイムの抹消登録をしたので、現在においては、登録番号第437674号の連合商標のうち「ユーハイム」のみが独立商標として存在しているところ、右連合商標は、昭和26年5月31日に出願、昭和29年1月13日に登録され」、「そうすると、原告の登録商標「ユーハイム」は、被告の登録商標「株式会社ユーハイムコンフエクト」より先願、先登録の関係に立つが、原・被告はそれぞれの商標権者であるから、各商標の使用権を専有し、かつ、各商標の類似範囲においてはお互に禁止権を有し、類似範囲の標章の使用はお互に出来ないことになるが、然し、本件和解による原告の類似範囲の禁止権放棄の効果は被告の右商標権の登録によつて何等影響をうけないから被告は従前通り、本件和解による使用許諾による原告の登録商標の類似範囲の使用が許容されている点には変りはない。このことは、本件和解条項第二項において、原告は被告に対し右商標登録についての異議を取下げる旨、約している点より見るも明らかである」。
 

3.商号について

 裁判所は、「被告は本件和解により「株式会社ユーハイムコンフエクト」という商号の使用を許諾され、右「ユーハイムコンフエクト」を商号として片仮名で表示する場合にはその表示態様につき格別の制限をすることなくその使用を許諾したことが認められるところである」と判断したうえ、「しかしながら、他人の商号や登録商標に類似する商号及び商標を使用するが商号権者や商標権者からその使用許諾をうけ、その表示態様に格別の制限を付せられなかつた場合においても、どのような態様の表示をとることも自由であるということはできず、そこには商号および商標が営業主体や商品についての自他識別力の機能を保有しなければならないという商号、商標の基本的性格から来る制約が存するものと解さるべきである」とし、

「即ち、自他識別の機能を著しく弱めるような表示態様を使用することは許されないと伝わねばならず、本件「ユーハイム・コンフエクト」の表示においても「コンフエクト」部分を「ユーハイム」部分に比して極端に小さく表示したり、或は「コンフエクト」部分を「ユーハイム」部分より著しく離して表示するなど、「ユーハイム」と「コンフエクト」の表示がありながら、和解で使用を許諾されたところの「ユーハイム・コンフエクト」としての表示とは解せられないようなものは許されない」としました。
 そして、「被告は、本件和解成立後においても片仮名「ユーハイム・コンフエクト」を商号、商標として使用するにつき「ユーハイム」部分と「コンフエクト」部分の文字の大小の割合、配列等において…、大体、本件第二表示記載の使用をしていることは当時者間に争がな」く、「被告は、現在においては、商号、商標の表示として本件第二表示の如き大小書き、二段書きの表示方法を使用しており、「コンフエクト」部分は「ユーハイム」部分の天地約二分の一程度の大きさで記載されるようになり、「ユーハイム」と「コンフエクト」との間に「・」を入れているのが殆んどであることが認められ」、

「右表示にあつては「ユーハイム」部分と「コンフエクト」部分はその書体も同一であり、「コンフエクト」部分に色彩を施したり、図案化したり、或は極端に離して書いておらず、「コンフエクト」部分の文字の大きさにおいても一般需要者が通常一見して判読できない程度のものではなく…和解で許諾された限度で表示されている…ことが容易に看取」できるとしました。

「そして、被告は、前記表示の外に、包装紙等に更に前記商標「YUHAIMU CONFECT」と人形商標を併せ用い、更に原告と被告の商標の識別力が強くなつていることが認められる」とし、

「以上の如き、被告の本件第二表示の使用を見ると、未だこれをもつて自他の識別を著しく弱めるものとは認められず、本件和解によつて許諾された使用範囲内にあることが認められる」と判断しました。


 なお「被告が「ユーハイム・コンフエクト」を商号、商標として前記の如き本件第二表示を用いたため、日本割烹学校発行にかかる料理雑誌「マイクツク」昭和四三年一二月号に被告の製品デコレーシヨンケーキを原告の製品と誤認した記事が記載されたり、昭和46年10月1日付のサンケイ新聞において被告の製品のシユークリーム中毒事件について原告の製品と誤認した記事が記載され、右につき需要者から原告への抗議の手紙が来たり、その他一般需要者に対し原告の商標「ユーハイム」と混同誤認を生ぜしめた事実があることが認められるが」、「右混同誤認も原告が「ユーハイム・コンフエクト」の使用許諾の結果生じたものであり、そして被告の商号、商標としての本件第二表示の使用も前記のとおり使用許諾の範囲内にあると認められ」、「原告においてはそれによつて生じた混同誤認の結果はこれを受忍せざるを得ない」としました。

 なお、裁判所は「「コンフエクト」を砂糖菓子或いは砂糖菓子店と直感する程外国語の知識が一般に普及していないことは当裁判所に顕著な事実で」、「右主張は理由がない」としました。

 

4.小括
 以上「被告が現に使用している前記の如き本件第二表示は、原告の本件和解による使用許諾の範囲内にあるというべきである。従つて、被告の本件第二表示の使用は何等本件和解に違背しているものといえないから、原告は被告に対し、本件第二表示より更に一般的に差止を求める第一次請求の趣旨の本件大小・二段書き表示の差止を求めることは出来ず、又、予備的請求の趣旨の本件第二表示の差止を求めることは出来ない」。


第二 予備的請求について
 「原告の「ユーハイム」なる表示は、原告の商品及び営業を示す表示として少なくとも神戸市及び名古屋市内において広く認識されているところ、被告は原告の右表示と類似する本件第二表示を被告の商品又は営業を示す表示として不正に使用し原告の商品又は営業上の施設又は活動と混同を生ぜさせていると主張するに対し」、被告は、「仮りに、本件第二表示の使用が不正競争防止法1条1項1号2号に該当するとしても、右使用は本件和解によつて、使用許諾されたことに基くものであるから違法性を阻却されると抗争する」ため、裁判所は以下のように判断しました。

 

(1)判断基準

 「不正競争防止法は不公正な手段によつて行われる競業行為を排除し、公正な競争秩序を維持し、もつて、特定営業者の私益及び需要者一般の公益を保護しようとするものであるが、同法の個々の規定においては私益の保護に重点のある類型と、公益の保護に重点をおく類型があるところ、後者においては被害者の承諾が違法性を阻却しないが、前者においては違法を阻却されると解するのが相当である。ところで、同法一条一項一号二号の規定は私益保護に重点が置かれる規定と解されるから、一般に周知表示使用者の使用許諾は違法性を阻却するものと言うべきである。」

 

(2)本件に関する判断

 「本件和解によつて「ユーハイム・コンフエクト」という商号、及び商標の使用を許諾し、その表示方法として格別の制限を設けなかつたこと、そして被告が前記認定のような本件第二表示の使用は本件使用許諾の範囲内にあり、従つて、これによつて生ずる或程度の混同誤認は原告において受忍せざるを得」ず、「仮りに、原告の「ユーハイム」なる商号、及び商標においていわゆる周知性があり、被告の「ユーハイム・コンフエクト」という本件第二表示が原告の右商号、商標と類似性があり、被告が右表示を使用することにより、原告が主張するように原告の商品並びに営業上の利益を害せられる虞があるとしても、被告の本件第二表示を使用する行為は違法性を阻却され、いわゆる不正競争行為を構成しない」。「したがつて、原告は被告に対し不正競争防止法1条1項1号2号に基づき第一次請求の趣旨の本件大小・二段書き表示の差止を求める権利、及び予備的請求の趣旨の本件第二表示の差止を求める権利はいずれもこれを有しない」。

 

■BLM感想等 

 本件は、「戦前、神戸市内でドイツ人シ・カール・ユーハイムとその妻エリーゼ・ユーハイムが経営していた「ユーハイムズ・コンフエクシヨナリ」は「バームクーヘン」などのドイツ菓子の製造、販売で有名な洋菓子店であり、その商標として「ユーハイム」(花文字体ユーハイムを含む)を使用していたが、戦災によつて工場の一部が焼失し、カール・ユーハイムは昭和20年8月14日病死し、エリーゼ・ユーハイムも夫死亡後営業を廃止したため右商標も放置されていたところ、戦後間もなく神戸市内において右「ユーハイム」の標章を商号や商標に使用する洋菓子店が乱立するようになつた」という背景があるようです。しかもその後「エリーゼ・ユーハイムは昭和22年2月頃、連合国により本国ドイツに強制送還されます。約6年後の昭和28年頃、再び来日し、神戸市内に居住するようになり、昭和29年11月頃、原告会社の取締役に就任」しています。その間被告会社が「昭和26年4月23日付で兵庫県より食品衛生法二一条の規定による菓子製造業の許可をうけ」、「その後、被告は昭和30年6月29日登録番号第46748号(指定商品…菓子及び麺麭)「株式会社ユーハイムコンフエクト」という商標の登録」等を得ています。 

 一方、原告は「カール・ユーハイム、エリーゼ・ユーハイム夫妻の経営する「ユーハイムズ・コンフエクシヨナリー」の従業員であつた訴外Y口栄及び同K村勇と本件和解当時の原告会社の代表取締役であつたH川I百治の三人が共同で昭和24年2月頃、神戸市生田区下山手二丁目五番地において開店した「ユーハイム商店」を前身とし、右Y口及び右K村がかつて「ユーハイムズ・コンフエクシヨナリー」に勤めていたことから、前記のように放置されたままになつていた商標「花文字体ユーハイム」を右「ユーハイム商店」の商標として使用することになり、これを商標として洋菓子の製造、販売を営み、個人営業を会社組織に改め昭和25年1月31日「株式会社ユーハイム商店」として原告会社を設立し現在に至つている」という背景があるようです。

 したがって、これまで本ブログで見てきた裁判例によれば、まず、「ユーハイム」のみを主な態様とする原告の表示については、その始原とどこまで結びついて使用が継続されてきたか、という点も重要になるように思いますが、いったん中断があり、かつ、その時期に「ユーハイム」の商号や商標が「乱立」し、なんとか、原告の従業員が創業者から引き継いだように見えますが、かかる経過も影響したのではないかと思います。

 いずれにしても、訴訟上の和解において、本件は、「ユーハイム」と「ユーハイム・コンフェクト」の類似性が主な争点となり、後者は明らかに前者の類似範囲又は混同をのおそれのあるものとして争いになっているのに、後者の使用を許諾し、かつ、使用態様の取り決めを細かくしておかなかったということなので、確かに、多少「コンフェクト」部分を小さくしたり、「ユーハイム」と「コンフェクト」を上下段に分かれる表記にしても、一応の一体性が認められる限り、使用許諾の範囲と判断されても仕方がないように思います。

 裁判所の判断としては、当時「株式会社ユーハイムコンフエクト」の商標登録出願中であり登録がされていなかつたのであるから、原告は右商標権にもとづき「ユーハイム・コンフエクト」の表示がその類似範囲に属すると認められるならば、その使用を禁止する権利を有していたのであるが、原告は、本件和解により右商標権にもとづく禁止権を放棄しその類似範囲に属する「ユーハイム・コンフエクト」の使用許諾を認めたものと言うべきである」と判断しました。また「商標権者が類似範囲の商標使用者に対して禁止権を放棄することは、その使用者については、その類似商標の使用について商標権者から使用許諾をうけた関係と同様のことを意味するからである」としました。したがって、当事者の関係は、使用許諾関係であり、関係解消しなかった事例とも言えるかもしれません。この点、「昭和46年10月1日付のサンケイ新聞において被告の製品のシユークリーム中毒事件について原告の製品と誤認した記事が記載され」抗議が来るなどし、混同誤認を生ぜしめた事実があることが認められるが」、「右混同誤認も原告が「ユーハイム・コンフエクト」の使用許諾の結果生じたものであり、「原告においてはそれによつて生じた混同誤認の結果はこれを受忍せざるを得ない」としました。

 

By BLM

 

 

 

 

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