不正競争防止法2条1項1号の裁判例をよむ

個人的興味からのランダムピックアップ裁判例 その66

本日は、フランチャイズ契約により関係形成した事業者間の関係解消事例を見ていきます。厳密には第一審は関係解消事例ですが、控訴審は、フランチャイズ契約によって形成したグループにおける内紛事例ですが、関係解消事例とはいえないかもしれません。

本裁判例は、LEX/DB(文献番号28061026)より引用。形式的な修正追加あり(「」等で明示ない箇所もあります)。

 

  福岡高判宮崎支部平成8・11・27〔ほっかほっか亭事件・控訴審〕平成4(ネ)159、同6(ネ)126(鹿児島地判平成4・8・28〔同・第一審〕昭和63(ワ)543、平成元(ワ)341/最三小平成12・4・25〔同・上告審〕平成9(オ)1046)

控訴人・附帯被控訴人 株式会社ほっかほっか亭
控訴人・附帯被控訴人 株式会社鹿児島食品サービス
補助参加人 別紙補助参加人目録記載のとおり
被控訴人・附帯控訴人 株式会社プレナス

 

■事案の概要等 

 本件は、控訴人㈱ほっかほっか亭が被控訴人㈱プレナスに対し、同控訴人が控訴人㈱鹿児島食品サービスと被控訴人間のフランチャイズ契約に基づき、右フランチャイズ契約上の鹿児島地区本部たる地位にあることの確認等を求め、被控訴人が控訴人らに対し、本件商標の使用差止等を求めたところ、控訴人㈱ほっかほっか亭の請求が棄却されたため控訴人らが控訴し、被控訴人が附帯控訴を提起した事案です。

 

■当裁判所の判断

(下線・太字筆者)

 裁判所は以下のように認定し、判断しました。

 

1.本件地区本部契約上の解除権ないし更新拒絶権の権利者について
1.裁判所は以下のように認定し、判断しました。

(1)「被控訴人プレナスは、昭和55年5月10日、全国を統括する地位にあった株式会社ほっかほっか亭総本部との間で「地域本部契約」を締結し、福岡、佐賀、長崎、大分、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄の各県を統括するサブフランチャイザーの地位を取得し、これに基づき、昭和55年11月21日、控訴人鹿児島食品サービスとの間で本件地区本部契約を締結し、これにより、控訴人鹿児島食品サービスは、被控訴人プレナスのもとで鹿児島県内を統括する、いわば「サブサブ」フランチャイザー(被控訴人プレナスとの関係ではフランチャイジー)としての地位を取得したことが認められる。そして、控訴人鹿児島食品サービスとともに控訴人ほっかほっか亭が本件地区本部契約上の地位、すなわち、「サブサブ」フランチャイザーとしての地位を有する」。
 「控訴人らは、本件地区本部契約は被控訴人プレナスをフランチャイザー、控訴人ほっかほっか亭をフランチャイジーとするフランチャイズ契約ではなく、被控訴人プレナスが本件地区本部契約の当事者になっているが、同契約の実質的当事者は株式会社ほっかほっか亭総本部であり、被控訴人プレナスは株式会社ほっかほっか亭総本部を代理しているに過ぎず、控訴人ほっかほっか亭と被控訴人プレナスとは全く同格の地区本部としてのサブフランチャイザーである旨主張」している。「しかし、同供述は、前掲各証拠の契約文言に照らして、到底採用することができず、他に前記認定を左右するに足りる証拠はない」。
(2)裁判所は、以上により「控訴人らが控訴人ほっかほっか亭と被控訴人プレナスとは全く同格の地区本部としてのサブフランチャイザーであることを前提として本件地区本部契約上被控訴人プレナスに同契約を解除ないし更新拒絶をする権限はないとする控訴人らの主張は採用できない」と判断しました。


2.本件地区本部契約の解除の効力について
 裁判所は「控訴人鹿児島食品サービスとともに控訴人ほっかほっか亭も本件地区本部契約上の地位を有するというべきであるから、被控訴人プレナスの右契約解除の意思表示は控訴人鹿児島食品サービスのみならず控訴人ほっかほっか亭に対してもなされたものと解するのが相当である。」と判断しました。

3.本件地区本部契約の更新拒絶の効力について
 裁判所は「更新拒絶の意思表示が控訴人鹿児島食品サービスのみならず控訴人ほっかほっか亭に対してもなされたものと解するのが相当である」と判断しました。
 そして、裁判所は「控訴人らは、本件地区本部契約の契約締結日からすれば、右契約の更新日は昭和63年11月21日であり、被控訴人プレナスがした更新拒絶の意思表示は更新拒絶に必要な所定の期間を欠くものである旨主張する」点に対し、「被控訴人プレナスは、宮崎地区本部及び沖縄地区本部との地区本部契約の始期が昭和56年5月1日であったので、同じ地区本部間の契約でありながら、本件地区本部契約の始期が右二地区本部との契約と異なるのは事務処理上不便であったところから、本件地区本部契約の始期を右二地区本部との契約の始期に統一することとし、本件地区本部契約の期間が昭和60年11月20日に満了するにあたって、同契約の期間を昭和61年4月30日まで延長し、その期間の満了時に、右二地区本部契約とともに本件地区本部契約の始期を昭和61年5月1日としたものであり、これについては、控訴人鹿児島食品サービスも異存がなかったことが認められるから、控訴人らの右主張は採用できない」と判断しました。 


4.被控訴人プレナスの更新拒絶の効力
 裁判所は以下のように認定し、判断しました。

1.経緯
(1)「控訴人らの元代表取締役K(平成7年9月8日死亡)は鹿児島市で、被控訴人プレナスの代表取締役Sは長崎県佐世保市で、ともに事務用機器等を販売する会社を経営する同業者であり、…ともに事業の転換を模索し、互いに情報の交換をしていたところ、SからKに、ほっかほっか亭弁当の外食産業に事業を転換する話があり、Kもそれに関心を持ち、Sに株式会社ほっかほっか亭総本部(当時の名称は「ほっかほっか亭東京事業本部」)のT社長を紹介してもら」い、Kは、Kの経営する南日本事務機株式会社の目的を変更して、昭和55年11月21日、当時既に株式会社ほっかほっか亭総本部と本件地域本部契約を締結していたS経営の株式会社ほっかほっか亭九州地域本部との間で本件地区本部契約を締結した」。

(2)「本件地域本部契約及び本件地区本部契約の各契約書は完成されたフランチャイズシステムの約款を基にして作成されたので…右各契約書の文言上はフランチャイズシステムとして完成されていることが前提となっていたが、右各契約締結当時、株式会社ほっかほっか亭総本部も株式会社ほっかほっか亭九州地域本部も僅か数店舗を有するのみで、フランチャイザーとして本来保有しているべき、フランチャイジーに対する食材の調達及び供給、商品開発による市場の開拓、消費者のニーズに対する適応、情報機能等の能力・体制に欠け、他の弁当産業の参入に先んじて組織拡大を図るための下部組織の設置に重点が置かれていたため食材の調達及び供給、商品開発、情報収集等下部組織が自己の責任において行わなければチエーン組織そのものが成り立たない体質のものであった」。
(3)「そこで、Kは、本件地区本部契約締結加盟店の加入の勧誘とともに、独自の食材調達ルートの確立に努めるとともに、…他の「ほっかほっか亭」類似標章使用業者に対する差止の仮処分申請等の対抗処置をとる等してほっかほっか亭フランチャイズシステムの組織の維持・拡大を図り、昭和60年ころには、鹿児島県内において「ほっかほっか亭地区本部」としての地位を築き上げた」。
(4)他方、Sも、「ほっかほっか亭地域本部」としての地位の整備に努め…昭和60年ころから、九州地域内における傘下の地区本部に対して契約書どおりの組織化を企画し、鹿児島地区本部に対して独自食材の使用禁止、食材及び商品(メニュー)の統一化を要求するようになった。しかし、Kは自力で鹿児島県内におけるほっかほっか亭フランチャイズシステムの充実を図ってきたとの意識が強かったので、Sとの間で軋轢が生じ、昭和60年3月2日には…Kがほっかほっか亭鹿児島地区本部の代表者として株式会社ほっかほっか亭九州地域本部の代表者であるS宛に・・誓約書を提出する嵌めになった。
(5)「ほっかほっか亭フランチャイズシステムはフランチャイズシステムとして完成されていない段階で全国的な組織拡大に走ったため、その後、組織が整備されるに伴い、地区本部及び加盟店における独自食材の使用、独自商品の販売等について問題が生じ始めた。そこで、被控訴人プレナスは、昭和61年5月1日に本件地区本部契約を更新する際に、総本部の指示を受けて、食材の独自調達及び独自商品の販売等の類似紛争を未然に防止するとの観点から、本件地区本部契約の契約期間を五年間から三年間に短縮した。
(6)「その後…被控訴人プレナスは、控訴人鹿児島食品サービスに対し、昭和63年6月4日付内容証明郵便で控訴人鹿児島食品サービスに独自商品販売等の契約違反があると通告し、同年7月7日到達の書面で本件地区本部契約解除の意思表示をするとともに、右契約解除の意思表示より前の同年7月4日ころから、控訴人鹿児島食品サービス傘下の加盟店に対して、「控訴人鹿児島食品サービスに契約違反があったので被控訴人プレナスとの本件地区本部契約を解除した」、「地域本部と新規に加盟店契約を締結しなければ、ほっかほっか亭の商標、看板ははずさなければならず、食材、包材の供給をしない」、「地域本部の直営店や新規加盟店を開店する」、「ほっかほっか亭地区本部の弁護士は辞任した」、「地域本部と新規に加盟店契約をすることで地区本部との間で紛争が生じた場合は、地域本部が解決する」といったことを喧伝し、控訴人鹿児島食品サービスとの加盟店契約の解除と被控訴人プレナスとの加盟店仮契約の締結を唆す一方、同月8日にはKに対し持ち株数を控訴人鹿児島食品サービス側五〇パーセント被控訴人プレナス側四〇パーセント、総本部一〇パーセントの割合とする新会社を設立し、鹿児島県下の加盟店を傘下に収めるとの和解案を提示し、その挙げ句、同年8月25日に至り本件更新拒絶の意思表示をした」
(7)「被控訴人プレナスの控訴人鹿児島食品サービス傘下の加盟店に対する右喧伝、唆しにより、被控訴人プレナスと加盟店仮契約を締結し、控訴人鹿児島食品サービスとの加盟店契約の解約申入れをした控訴人鹿児島食品サービス傘下の加盟店は同年八月末日までに33店舗に及んだ」。
以上の事実が認められる。

 

2.判断
 裁判所は以下のように認定し、判断しました。

本件地区本部契約は、経済的合理性を追求する企業間の契約であり、同契約には地域本部において契約の更新拒絶をするための要件として信頼関係破壊等の特別の事情を要する旨の条項はなく、また、本件地区本部契約のようなフランチャイズ契約について、借地・借家関係のように一方当事者を保護する特別の法的規制をした立法もないことからすると、地域本部が本件地区本部契約の期間満了に当たって契約の更新を拒絶するための要件として、控訴人らの主張のような要件が必要であるということはできない

 しかしながら、本件においては…ほっかほっか亭総本部はもとより、地域本部の被控訴人プレナスも、契約上、地区本部である控訴人らに対してなすべきことが前提とされているサービス、特に、食材の調達及び供給並びに消費者のニーズに応える商品開発等について、能力・体制が欠けていたため地区本部である控訴人らが鹿児島県内においてほっかほっか亭フランチャイズシステムの維持・拡大を図るために独自に食材の調達及び供給ルートの確立並びに消費者のニーズに応える商品開発の努力をしなければならなかったこと

鹿児島県内におけるほっかほっか亭の商号、商標、サービスマーク等のイメージの定着及び普及は専ら地区本部である控訴人らの貢献によるものであること

地域本部による契約更新の拒絶が認められると、地区本部である控訴人らがほっかほっか亭の商号、商標、サービスマーク等が使用できなくなるだけでなく、控訴人らの長年にわたる投資と努力の結果築き上げた加盟店鹿児島地区本部との加盟店契約を解消して、地域本部である被控訴人プレナスとの間で加盟店契約を締結し、地区本部である控訴人らの築き上げた基盤を地域本部である被控訴人プレナスが労せず獲得するという結果になりかねないこと

被控訴人プレナスは控訴人らの契約違反を理由に本件地区本部契約の解除や和解案の提示をする一方、控訴人ら傘下の加盟店に対し前記のとおりの喧伝・唆しをして離反を促し、本件地区本部契約の更新拒絶の意思表示に及んでいること

Kが控訴人鹿児島食品サービスの代表取締役として被控訴人プレナスに差し入れた乙第四号証の前記誓約書は、それを提出しなければ被控訴人プレナスから控訴人鹿児島食品サービスに以後食材、包材の供給を一切停止すると通告され、また、

被控訴人プレナスの代表取締役Sから独立するように言い渡されたことによるものであること、

被控訴人プレナスの主張している控訴人らの前記契約違反は…被控訴人プレナスが整備した体制・経営方針に副わなくなったことによるものであり、控訴人らの側には酌むべき事情もあること

本件地区本部契約は契約期間満了の180日前に当事者双方から特別の申出のない限り、自動更新となる建前であり、更新が原則となっていること等を併せ考えると、

被控訴人プレナスの本件更新拒絶の意思表示は、公平の観念に照らして、信義則上許されないものというべきである」。
 

 「もっとも、控訴人らは、本件訴訟において、被控訴人プレナスは本件地区本部契約の当事者ではなく、ほっかほっか亭フランチャイズシステムの組織上では控訴人らと被控訴人プレナスとは同格である旨主張し、控訴人らの元代表取締役Kが代表者尋問において右主張に副う供述をしていることは前記のとおりであり、控訴人らがそのような主張をし、控訴人らの代表者が同様の趣旨の供述をすることは、控訴人らと被控訴人プレナスとの間の本件地区本部契約を否定するものであるから、その一点において、被控訴人プレナスが本件地区本部契約を終了させる理由として十分であるといえなくもない。しかしながら、控訴人らの右主張は、本件訴訟における攻撃防禦方法としてのものであるから、本判決後もそのような態度を堅持する場合はともかく、本件訴訟においては、控訴人らが右のような主張をしていることを捉えて、被控訴人プレナスの本件更新拒絶の意思表示が有効であるということはできない」。


3.裁判所は以下のように認定し、判断しました。

 「してみると、控訴人ほっかほっか亭の本件地区本部たる地位の確認を求める請求は理由がありなお、控訴人ほっかほっか亭は、地区本部たる地位の基礎となる本件地区本部契約の更新日について、被控訴人プレナスの更新拒絶の意思表示がなされた時期との関係から、当審において昭和60年11月21日と訂正し、更新された同日付フランチャイズ契約に基づく地区本部たる地位の確認を求めるとしているが、控訴人ほっかほっか亭の右請求は契約更新の基本となる本件地区本部契約の点について主張を変更しているものではないから、控訴人ほっかほっか亭の右請求は、認定された更新日の契約に基づく地区本部たる地位の確認を含む趣旨と解される。)、また、控訴人ほっかほっか亭傘下の加盟店に対する被控訴人プレナスの前記喧伝及び唆しの事実が認められ、その後、被控訴人プレナスはそのような喧伝及び唆しをしていないが、それは仮処分決定によって禁止されていること(甲第六七号証)によるものであるから、控訴人ほっかほっか亭の不作為義務を求める請求も理由があるというべきであり、他方、本件地区本部契約が終了したことを前提とする被控訴人プレナスの控訴人らに対する商標使用等の差止を求める請求は理由がない」。
 

■結論

 裁判所は、「控訴人株式会社ほっかほっか亭の本訴請求は理由があり、被控訴人プレナスの本訴請求が失当であるところ、控訴人株式会社ほっかほっか亭の本訴請求を理由がないとして棄却し、被控訴人プレナスの本訴請求を理由があるとして認容した原判決は相当でないから、これを取消」すなどと判断しました。

 

■BLM感想等

 本件は、フランチャイズ契約によって形成したグループにおける内紛事例です。第一審では、関係解消したとして、本件控訴審の第一審判決は、控訴人ら(341事件被告ら)は「その本店及び直営店において、「ほっかほっか亭」と表示して、弁当、サラダ、味噌汁、スープの製造、販売をしてはならない旨や、商号変更登記中「ほっかほっか亭」の部分の抹消登記手続をせよの旨が命じられました。そうすると関係解消事例と言えるかと思います。一方が一方に差止請求できるか、という問いに対しては、地区本部として、周知性に貢献してきた控訴人(341事件被告ら)は、差止請求の対象になってしまうということになります。

 一方、本件控訴審は、控訴人が、第一審敗訴を受け、フランチャイズ契約上の鹿児島地区本部たる地位にあることの確認を求めた事案です。裁判所は「ほっかほっか亭総本部はもとより、地域本部の被控訴人プレナスも、契約上、地区本部である控訴人らに対してなすべきことが前提とされているサービス、特に、食材の調達及び供給並びに消費者のニーズに応える商品開発等について、能力・体制が欠けていたため、地区本部である控訴人らが鹿児島県内においてほっかほっか亭フランチャイズシステムの維持・拡大を図るために独自に食材の調達及び供給ルートの確立並びに消費者のニーズに応える商品開発の努力をしなければならなかったこと」などを捉え、「被控訴人プレナスの本件更新拒絶の意思表示は、公平の観念に照らして、信義則上許されない」と判断しました。一方が一方に対し差止請求できる関係にない、ということになり、関係解消事例ということにはならなくなります。関係解消していないので、旧不正競争防止法1条1項1、2号(現行法2条1項1号)の差止請求も問題となりません。
 それにしても、ほっかほっか亭に関する事件の構想が垣間見られる裁判例です。本件、なかなか興味深いですね。

 

By BLM

 

 

 

 

  (^u^)コーヒー ==========================

知的財産-技術、デザイン、ブランド-の“複合戦略”なら、

ビーエルエム弁理士事務所兼・今知的財産事務所BLM相談室

の弁理士BLMと、今知的財産事務所の弁理士KOIP

==============================コーヒー (^u^)

東急沿線の商標屋さん!ビーエルエム弁理士事務所

東急目黒線から三田線直通で御成門駅近くの今知的財産事務所