不正競争防止法2条1項1号の裁判例をよむ

個人的興味からのランダムピックアップ裁判例 その61

 本日は、フランチャイズ契約により関係形成した事業者間の関係解消事例を見ていきます。

 本裁判例は、LEX/DB(文献番号25444975)より引用。形式的な修正追加あり(「」等で明示ない箇所もあります)。

 

  東京地判平24・10・17[エイブルフランチャイズ契約解除事件〕平成23(ワ)26696 

原告 株式会社エイブル
被告 株式会社サンクス・ライフパートナー

 

■事案の概要等 

 不動産仲介業のフランチャイザーである原告が、被告に対し、原告との間の加盟契約が終了したにもかかわらず、原告商標と類似する被告標章を広告使用しているとして、商標法36条1項、2項に基づき、被告標章を付した広告物の廃棄等を求めた事案でです。原告は不正競争防止法上の請求をしましたが、同法に関する判断はしていません。

 

◆前提事実(原告の主張)

 原告は、建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介等の役務について、「エイブル」の文字と図形からなる商標について登録(登録第5023413号)を有していました。(J-PlatPat:こちら

 被告は、本件加盟契約が終了したにもかかわらず、現在に至るまで、原告商標と「被告標章」を看板に付して,被告標章を広告使用し、また、被告標章を広告使用等していました。

 原告は,1968年にアパート・マンションの賃貸仲介業務を開始して以来,不動産賃貸仲介事業,不動産管理事業,フランチャイズ事業,パーキング事業等を展開することで順調に企業規模を拡大させ,今現在においては,資本金26億2200万円,従業員数3020名,国内店舗網として直営店471店,ネットワーク店339店を擁する日本屈指の不動産賃貸仲介業者である」等と述べ、原告は,原告表示を統一営業表示として使用する会社として,テレビCM・インターネット上で大々的に公告宣伝を行うとともに,エイブルネットワーク各加盟店においては原告表示を付した広告看板・名刺・封筒等を用いて業務が行われており、上記原告表示を見れば原告が営業主体として行っている業務であることが強く認識されるとして不正競争防止上の請求を行いました。

 

■当裁判所の判断(下線・太字筆者)
 裁判所は以下のように原告の主張・立証を受け、原告の請求を認めました。

 

1.「被告は,公示送達による呼出を受けたが,本件口頭弁論期日に出頭しない」。
 

2.「請求原因(1)(当事者)の事実」を認めました。

 原告は、「原告は,主に不動産賃貸借仲介及び不動産管理を目的とする株式会社である」であり、「被告は,主に不動産の売買,賃貸,管理,仲介等を目的とする株式会社で」、「被告の旧商号は有限会社住マイルホームであり,平成21年1月20日に株式会社住マイルホームに,平成23年1月9日に現商号に商号変更されている」と主張しました。
 

3.「請求原因(2)(本件加盟契約の締結等)の事実」を認めました。

 原告は以下主張・立証しました。

「ア 原告は,平成21年2月1日,被告との間で,福島県郡山市<以下略>所在,エイブルネットワーク郡山中央店に関する「エイブルネットワーク加盟契約」(以下「本件加盟契約〔1〕」という。)を締結した。
イ 原告は,平成20年3月31日,被告との間で,福島県郡山市<以下略>所在,エイブルネットワーク日大通り店に関する「エイブルネットワーク加盟契約」(以下「本件加盟契約〔2〕」といい,合わせて「本件加盟契約」という。)を締結した。
ウ 本件加盟契約においては,以下のような条項が定められている。
(ア)ロイヤルティ等(22条)
〔1〕ロイヤルティ,広告分担金及びANS(エイブルネットワークシステム)システム利用料は,契約始期日から発生するものとする。開業から1か月に満たない場合,日割計算によって算定するものとし,毎月月末締め分を翌月26日までに原告に着金するように,原告が別途指定する銀行口座へ振り込むものとする。なお,振込手数料は被告の負担とする。
〔2〕ロイヤルティは月額5万2500円(税込)とする。
〔3〕広告分担金は月額5万2500円(税込)とする。
〔4〕ANSシステム利用料は月額5万2500円(税込)とする。
(イ)契約解除(45条)
 被告において次の各号の1つにでも該当する事由が発生したときは,原告は,被告に対して,2週間の猶予期間を設けて文書にて是正を求め,猶予期間満了後においても,その事由が改められない場合は,本契約を解除することができ,解除とともに違約金として,22条に定める月額徴収料の3か月分相当額の金員を請求することができる。
〔1〕22条に規定する債務の滞納があるとき。
(ウ)終了に伴う債務等の決済(49条)
 本契約が期間満了,解約,解除などにより終了した場合,その理由の如何を問わず,被告は原告及びその関係会社に対し,負担している金銭債務を直ちに支払うものとする。
(エ)契約終了の効果(50条)
 契約が解除・解約または期間満了等により終了したときは,その理由の如何を問わず,被告の本契約に基づく一切の権利は消滅し,被告は次に掲げる事項を履行するものとする。
〔2〕「エイブル商標等」を表示する全ての商標類,看板等の一切の使用を直ちに中止する。」


4.「請求原因(3)(本件加盟契約の解除)」の事実を認定しました。

 すなわち「被告が平成22年10月分及び11月分のロイヤルティ等合計63万2100円(本件加盟契約〔1〕につき31万7100円,本件加盟契約〔2〕につき31万5000円)の支払を怠ったこと」、

「原告が,被告に対し,平成23年1月13日到達の書面により,本件加盟契約に基づく未払ロイヤルティ等を平成23年1月17日までに支払うよう催告するとともに,同期間の経過により契約を解除する旨の意思表示をしたこと」、

「同書面到達の2週間後である平成23年1月27日が経過しても,被告は上記未払ロイヤルティ等を支払わなかったこと」

が認められる。

 裁判所は、契約解除の効果が発生する日を認定すべく、「本件加盟契約書45条には,2週間の猶予期間を設けてロイヤルティ等の支払を催告した場合において,上記猶予期間経過後に,なお支払がされない場合には,原告は本件加盟契約を解除することができる旨の記載があるが」、「原告が,指定した期間内の支払を催告し,その催告期間の経過により契約を解除する旨の意思表示をしていた場合において,遅くともその意思表示後に約定所定の猶予期間(2週間)が経過することにより,契約解除の効力が生じるとする趣旨を含んで合意された」と認定し、本件加盟契約は,平成23年1月27日の経過をもって解除された」と認定しました。


5.「請求原因(4)(未払ロイヤルティ等)」につき、「被告の支払うべき金員」を認定しました。
 そうすると、被告は「本件加盟契約49条により,被告は,本件加盟契約が解除により終了した場合,負担している金銭債務を直ちに支払うべき義務を負うところ」,「本件加盟契約は,平成23年1月27日の経過によって解除されたものと認められるから」,被告は「未払ロイヤリティ等…円につき,上記解除日の翌日である同月28日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金を支払うべき義務を負う」とし、「被告は,公示送達による呼出しを受けたものであるところ,上記送達は,平成24年8月6日の経過により,同月7日をもって効力を生じたものと認められるから(当裁判所に顕著),被告は…違約金…につき,上記送達日の翌日である同月8日から支払済みまで,商事法定利率年6分の割合による遅延損害金を支払うべき義務を負う」となりました。

 

6.「請求原因(5)(商標権侵害)」につき、被告標章を認定し、原告商標と比較の上、「被告による被告標章を付した看板,自動販売機,シャッター等の広告物の展示行為は,原告の商標権を侵害するものとみなされる(商標法37条1号)から,原告は,被告に対し,商標法36条1項・2項に基づき,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介…に関する広告に被告標章を付して展示することを差止め,被告標章を付した別紙物件目録…の看板を廃棄し,別紙物件目録…記載のシャッターから被告標章の表示を抹消し,別紙物件目録…記載の自動販売機から被告標章の表示を抹消するよう求めることができる」と判断しました。


7.「請求原因(6)(不正競争行為)」については、「請求原因(5)(商標権侵害)」と選択的な請求と解されるところ,商標権に基づく請求が全て認められるから,不正競争行為の成否については判断しませんでした。

 

■結論

 裁判所は、被告に対し、「216万8554円及びうち122万3554円に対する平成23年1月28日から,うち94万5000円に対する平成24年8月8日から,各支払済みまで年6分の割合による金員」の原告への支払い、「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介の役務に関する広告に,別紙被告標章目録記載の標章を付して展示してはならない」旨、「標章を付した別紙物件目録…の看板を廃棄」の旨、「シャッターから,別紙被告標章目録記載の標章の表示を抹消」の旨等を命じました。

 

■BLM感想等

 裁判所は、本件において、フランチャイズ契約の内容のうち、契約の解除事由を明らかにし(本件の場合は一定期間の対価の未払いで)、契約が解除できるか、解除の日はいつか、未払債務、利息、遅延損害金等を計算し示しました。フランチャイズ契約は両者の約束がしっかりしているので、関係解消事例としては、比較的容易に解消しやすいものと考えます。そして関係解消した後の商標の帰属先は、基本的には、フランチャイザーと認められ、フランチャイザーがあらかじめ商標権を取得し許諾の際に商標権の存在を示す場合が多いと思います。 

 本件は、別途商標権の権利行使についても判断していますが、商標の使用については、フランチャイズ契約の最中は、フランチャイザーが、契約において、商標の使用に関する条項に従い、フランチャイジーをコントロールできると思うのですが、フランチャイズ契約が終了した場合、その後は契約関係が無くなるので、なにをもって元フランチャイジーをコントロールできるかが問題となます。そのようなときに使えるの商標権なんですね。で、紛争となりやすいのが、結局、何らかの権利を取得していない場合といえるでしょう。そこで、不正競争防止法が場合によっては使えるというわけです。そのブランドの出所識別標識を発揮するような店舗内の何か(包装容器やインテリア等)を契約終了後も、元フランチャイジーが使う場合は、不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為の主張も考えられます。

 

By BLM

 

 

 

 

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