不正競争防止法2条1項1号の裁判例をよむ

個人的興味からのランダムピックアップ裁判例 その41

 本日も、血族関係や親子関係等が絡む関係解消事例を見ていきます。本件は、会社が絡みますが、基本的には、兄弟姉妹間の争いのようですね。

 

  東京地判平11・5・14〔赤坂三田ビル藤会館事件〕平7(ワ)7070(東京高判平12・2・29〔同〕平11(ネ)3545)

原告 有限会社赤坂ふじや(代表小山S)
被告 三田K

 

■事案の概要等 

 本件は、原告は、昭和34年3月31日、化粧装飾品等の販売、飲食店の営業、不動産貸付業等を営業目的として設立され、営業表示として「赤坂三田ビル藤会館」及び「三田ビル藤会館」の各商号を使用してその営業を行っており、その商号は広く認識されていると主張し、被告は、原告の取締役として在任中、平成六年七月二五日付をもって「赤坂三田ビル藤会館」及び「三田ビル藤会館」の商号の登記手続をしたため、被告は、右登記を原告の営業を妨害する意図もしくは嫌がらせの意図の下にしたのであり、いまだ右商号を用い原告と同種の営業を同一地域で行い、原告の営業上の施設及び活動と混同を生ぜしめているものではないが、将来このような行為をすることによって原告の営業上の施設である店舗、もしくは営業活動と被告のそれと混同を生ぜしめるおそれがあり、かつ原告はその営業上の利益を害されるおそれがあるとして、原告が被告に対し商法二一条、不正競争防止法二条一項一号、三条に基づき、右各商号の使用の差止めと抹消登記手続を請求等した事案です。

 

■当裁判所の判断

Ⅰ.請求原因1について

 原告は被告に対し、三田Cに対する債権(金銭消費貸借に基づく債権、未払利息債権、未払家賃債権…等)を有していたところ、相続により、原告と三田Cの子供(3人)が、均等に相続しました。

 被告は、当初、原告がCに対し、昭和五〇年九月ころ、本件ビルの七階部分の一部を、賃料を月額二〇万円として、貸し渡した事実について自白したが、その後、右自白を撤回し、また「被告は、賃貸期間を三田Cの一代限りとする契約は使用貸借であるから賃料は発生せず、また、このような契約は借家法に反し無効である旨主張しました。

 裁判所は、認定事実の基づき「自白の撤回は許されない」とし、また賃料を月額二〇万円とする合意が含まれる以上、右契約が使用貸借であるとはいえないし、仮に借家法違反があったとしても、右期間の定めが無効になるにすぎないから、被告の右主張は理由がない。有限会社法三〇条についての被告の主張は」失当であるとし、その他被告の主張をいずれも認めませんでした。

 

2.請求原因2(請求の趣旨二項、三項関係)について
 「原告が営業表示として「赤坂三田ビル藤会館」及び「三田ビル藤会館」の各商号を使用してその営業を行っており、その商号は広く認識されていること、被告が、東京地方法務局港出張所において平成六年七月二五日付をもって「赤坂三田ビル藤会館」及び「三田ビル藤会館」の商号の登記手続をしたこと」の事実に対し、裁判所は、「被告が、右各商号を使用して、貸しビル業など原告と同一又は類似の業務を営み、これにより、原告の営業と混同を生じさせるおそれがあることは明らかである」とし、「不正競争防止法三条、二条一項一号に基づく商号使用の差止めと右登記の抹消登記手続の請求は理由がある」と判断しました。

 

 また、裁判所は、以下の被告の抗弁について、以下のように認定、判断しました。

 

(1)「抗弁1(調停の成立)について
 裁判所は、「平成六年一月一八日、被告を申立人とし、原告を相手方とする東京簡易裁判所平成五年ユ第六三号地代請求調停事件において、調停が成立したこと、その調停条項の第五項には、「相手方と申立人・・・は、別紙物件目録記載(一)、(二)の土地、および同地上建物に関し、本調停条項に定めるほか何等の債権債務のないことを相互に確認する」との定めがあること、調停条項の別紙物件目録には、本件土地をその対象にしていることが認められる」とし、「原告、被告間においては、本件土地上の本件ビルに関し、右調停条項に定めた以外には、一切の債務がないことが確定したというべきで」、「原告が主張する被告に対する賃料請求債権は右調停成立以前のものであるから、右調停成立により消滅した」とし、「被告の抗弁1の主張は採用することができる」と判断しました。

(2)抗弁2(相互契約)について
 被告、被相続人C、相続人S、Y及びTが、昭和四八年九月、本件土地上に原告名義でビルを建設することに関する相互契約を締結したこと、その第七条に、「ビルが竣工し、テナントが入居して賃料収入が計上し得る状態に至ったとき、原告は月額賃料総収入金額の一〇倍に相当する資金を捻出し、小山S、三田Y、三田T、亡C、被告の順で同人らに出資し、その使用に委ねる。この出資金は返還することを要しない。」との主張に対し、以下のように判断し、裁判所はこれを認めませんでした。

 すなわち、「被告は、原告のCに対する支払は、右相互契約により生じたものであるから返還を要せず、そうでなくとも、被告は右相互契約の権利の行使により、相殺する旨主張する。被告の主張は、必ずしも趣旨が明らかではない」。「原告のCに対する支払は、貸金、立替金及び仮払金に基づくものであり、これらは、右相互契約所定の返還を要しない出資金に当たらないことは明らかであるので、被告のこの点の主張は失当である」。「また、右相互契約七条においては、原告から出資を受けられる順序が定められているところ、Cより先順位の者が出資金を受領したことを認めるに足りる証拠はなく、被告のこの点の主張も理由がない(なお、…前記相互契約により、C、被告、三田T、三田Y、Sは、誠実に協力して本件土地上に原告の名義で本件ビルを建築することを前提に、右五名が全員原告の取締役となり、右五名が原告から支払を受けること等を一旦合意したこと、しかし、本件ビルの建築のための資金の調達について右五名の間で争いが発生し、昭和五一年には、C、三田Y、三田Tが、被告に対し、土地所有権持分移転登記手続請求訴訟を提起するに至り、その他にも、被告と被告を除く四名との訴訟が多数係属したことが認められ、右のような事情によれば、遅くとも本訴が提起されたころまでには、右相互契約は、当事者間の合意により、解消したものと解するのが相当である。…)」。


3 抗弁3(権利濫用)及び抗弁4(消滅時効)についても、裁判所は、これを認めませんでした。


■結論
 裁判所は、被告は、原告に対し金員の支払いと、「「赤坂三田ビル藤会館」及び「三田ビル藤会館」の各商号を使用」の差止、及び、「赤坂三田ビル藤会館」及び「三田ビル藤会館」の各商号登記の抹消登記手続をせよとの判断を下しました。

 

■BLM感想等

 本件は、上記抗弁2に関し、「C、被告、三田T、三田Y、Sは、誠実に協力して本件土地上に原告の名義で本件ビルを建築することを前提に、右五名が全員原告の取締役となり、右五名が原告から支払を受けること等を一旦合意したこと、しかし、本件ビルの建築のための資金の調達について右五名の間で争いが発生し、昭和五一年には、C、三田Y、三田Tが、被告に対し、土地所有権持分移転登記手続請求訴訟を提起するに至」る等と認定されており、その際に、商号登記が、いわば被告にとられ、それに対し、不正競争防止法で対抗したという事案で、BLMとしては、なるほど、会社の名前をこのように対抗手段として採る場合もあるのだなと思いました。会社の名前は誰のものか、といえば、考えてみると、「赤坂三田ビル藤会館」及び「三田ビル藤会館」というのは、一般の言葉を結合させただけといえば、誰でも商号として採用しうるものなので、被告が登記をしたこと自体は不当ではないのかもしれません。しかし、他人の商号であれば、それは認められません。被告が、相続人の一人なので他人ではないかもしれません。しかし、裁判所は、不正競争防止法三条、二条一項一号に基づく商号使用の差止めと右登記の抹消登記手続の請求は理由があるとしたわけです。

 BLMの私見ですが、お金が絡むと話がややこしくなります。土地上にビルを建て、会社を作るという話は一人に任せて進めた方がよかったのかもしれません。もちろん資金調達の面で難しい部分もあると思いますが、兄弟姉妹で均等に出し合い、ものごとを進めていくというのは難しそうです。三田Cは子供たちに対し影響力のある方だったような印象を受けますが、その方が亡くなられると、いっきに求心力がなくなり争いが起こるというのはありそうな話かな、ともいました。

 

By BLM

 

 

 

 

 

 

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