不正競争防止法2条1項1号の裁判例をよむ

個人的興味からのランダムピックアップ裁判例 その29

 本日も、元従業員と会社(本件では、元組合員と組合)との間で紛争となった事例を見ていきます。

 

  盛岡地判平7・9・25〔赤帽除名処分無効確認等請求事件〕平2(ワ)59、平2(ワ)350、平3(ワ)8

原告 S.Y.
被告組合  赤帽岩手県軽自動車運送協同組合 

被告連合会 全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会 

被告会社  紫波運送有限会社※

(※「被告組合及び被告連合会は、被告会社に対し、不正競争防止法三条一項により、被告会社が運送業の営業について使用している「赤帽」及び「アカボウ」なる営業表示の使用差止めを求める」相手です。また、原告は被告会社代表者の妻です。)

 

 

■事案の概要等 

 本件は、「赤帽」表示を使用して軽自動車運送業を営む事業者を組合員とする被告組合の組合員であった原告が、原告が被告組合に対して組合費を納入しない等の理由で、被告連合会の理事会において決議された本件除名処分は無効である等として、被告連合会に対しては本件除名処分の無効確認を、被告組合に対しては組合員としての地位確認をそれぞれ求める本訴を提起したのに対し、被告組合が、原告が被告組合の組合員でないことの確認及び「赤帽」なる表示の使用差止等を求める反訴を提起した事案です。更に、被告らが、原告の経営する被告会社に対し、「赤帽」なる営業表示の使用差止等を求める事案が併合審理された事案です。

 

◆当事者

原告盛岡市で「赤帽紫波運送」なる表示を使用して軽自動車運送業を営み、被告組合設立時にその組合員となりました。
被告組合 昭和52年10月24日、中小企業等協同組合法に基づき設立され、岩手県内で「赤帽」なる表示を使用して軽自動車による運送事業を営む事業者を組合員とする事業協同組合です。事業目的は、組合員のための貨物の共同受注、共同配車、組合員の事業に必要な車両、部品及び消耗品の共同購入等、その他組合員の事業に関する経営及び技術の改善、向上又は組合事業に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供等が主な事業です。また、下記被告連合会の組合員です。
被告連合会 全国各県に設立された「赤帽」なる表示を使用して軽自動車による運送事業を営む事業者を組合員とする事業協同組合(以下「赤帽組合」)相互の連絡を確立するため、各赤帽組合を組合員として、昭和53年8月31日、中小企業等協同組合法に基づき設立された協同組合連合会です。

 

■当裁判所の判断
第一 平成二年(ワ)第五九号事件について

1.被告連合会の平成元年一二月一日付理事会決議及び同月一一日付原告に対する書面通知について

 裁判所は以下のように認定・判断しました。

 被告連合会は、平成元年12月1日に理事会で決議した結果を、書面により原告に通知した。

 当該書面には「「連合会運営規約第二七条の規定により、登録商標「赤帽」の標示使用する一切の権利を停止し、直ちに剥奪することを決定した。」等商標権の使用停止を通知する趣旨の記載があるのみであって、そのどこにも原告を除名した趣旨の記載はない。右通知が処分の根拠として挙げている被告連合会運営規約二七条は、被告連合会が、登録商標「赤帽」の商標権者として、被告連合会規約の条項に違背し、若しくは被告連合会の事業及び会員事業の円滑な運営を妨げ、あるいは妨げようとした所属員に対し、登録商標「赤帽」の表示使用する権利を停止し、直ちに剥奪できるものとした規定であって、当該所属員をその所属する赤帽組合から除名する権限を定めたものではなく、右通知において被告連合会定款及び同運営規約の各除名事由を挙げているのは、原告の被告連合会規約の条項に違背」等した「事由として指摘したに過ぎないとみることができる。」
 そうすると、被告連合会が、上記「理事会決議に基づいて行ったとする、原告を被告組合より除名する処分」は存在しない。
 「当事者間には、被告連合会の前記理事会決議が原告に対する除名決議であったか…争いが存するだけで…右決議が除名処分としての効力を有」せず、「原告が右決議によって被告組合の組合員たる資格を喪失しない」ため、「右決議を前提とする法律関係について現在、紛争は存在しない」。「原告の被告連合会による除名処分の無効確認を求める訴えは、確認の利益を欠く」。

 

2.除名事由の存否について

 裁判所は以下の事実を認定等し「被告組合定款13条2号、乙9の同規約6条、10条2項(6)の除名事由に該当する事由がある」と判断しました。

 

(1)広告掲載について

 「被告組合代表者によれば、原告は被告組合に「河南」の商号で届出ているところ…電話帳に「赤帽引越荷造センター」「赤帽河南TEL盛岡五三‐二三一〇」と掲載されており、原告が購入した赤帽車の車体にも右電話番号が掲示されている」。そして「被告会社代表者によると、原告は被告会社代表者の妻であり、右電話は、被告会社と同じ事務所内に設置され」、「広告掲載の依頼は被告会社名義で行っている」。

 上記認定事実に照らすと「広告掲載は、原告が被告会社と共同で行っていたもの」であるところ、被告組合は「「赤帽」表示を使用して軽自動車による運送業を営む事業者を組合員とする事業協同組合で、組合員のために共同受注等の事業を営んでおり、「赤帽」という被告組合の営業表示としての周知性は」後述の通り認められる。そして「「センター」なる名称が、被告連合会運営規約九条一〇号が例示して禁止している会員組合の施設と誤認させる名称であ」り、「被告組合代表者によれば、現に「赤帽引越センター」に注文した顧客が、荷物配送の遅れや料金についての苦情を、右注文先が被告組合の施設と誤認して被告組合に持ち込んで来ることが本訴係属後も一か月に数度あることが認められる」

 そうすると、「赤帽引越センター」の広告を見て被告組合の施設と誤認し発注する顧客が相当数存在することは疑いのないところであり」、「右広告が被告組合に対する電話による注文を阻害していることが明らかで…被告組合の事業を妨げている」。
 なお、被告組合は「広告には陸運支局に申請した名称を使用すること、センター名は本部の許可なく絶対に使用しないことなどを各組合員に対し注意したが、原告らは、それ以後も…掲載を続けている」
 「以上検討したところによれば、原告には…被告組合定款13条4号の事由がある
」。

 

 「原告は、「赤帽」は営業主体を表示する商標ではなく、営業主体の保護に及ばないから、「赤帽」表示が営業主体の混同を引き起すことを除名の理由とすることはできないと主張する」が、「被告組合の組合員である原告が「赤帽」なる表示を使用したこと自体を問題としているわけでないことは前記説示のとおりで」、「商標権の問題でもないから」、「主張自体失当である」等。

(下線筆者)

 

(2) その他

 裁判所は、組合費滞納、無断増車について除名事由に該当する等としました。(その他省略。)

 

3 本件決議の無効事由の存否について
 「原告に実質的に除名理由を告知して弁明の機会を与えていない、出席者の三分の二以上の賛成を得ていないとの事由は、いずれも招集手続又は決議方法の法令違反であって、…決議の日から三か月内に決議取消の訴えを提起することによってのみ主張すべき事由であるから、主張自体失当である」。

 「次に、‥‥被告組合の施設と誤認するような広告掲載、組合費の滞納及び営業所変更無届出が除名事由に該当するものの、そのうち組合費の滞納は、本件除名決議当時既に完納し…原告以外にも滞納している組合員も存することから考えて情状酌量する余地があ」る等により、「これらを理由とする除名は許されないと考える余地がある」。

 しかし「右広告掲載を理由とする除名は止むを得ない」といえ、「中小企業等協同組合法19条2項3号所定の除名事由が存する」。「本件除名決議は法令に反せず、したがって無効事由は存しない」。(下線筆者)


4.結論

 以上により「本件除名決議は有効であり、原告は本件除名決議によって被告組合から除名され」、「被告組合の組合員たる地位を失ったもの」で、「原告の本訴請求のうち、原告が被告組合員であることの確認を求める部分は理由がない」。
 

第二 平成二年(ワ)第三五〇号事件について
裁判所は、以下のように認定・判断し、「本件反訴請求のうち、「赤帽」表示の禁止や軽自動車の「赤帽」文字の消去等を求める部分もまた理由がある」と判断しました。

「1.被告組合の本件反訴請求のうち、原告が被告組合の組合員でないことの確認を求める部分は理由がある」。
「2.原告が本件除名決議によって被告組合を除名され」、「被告組合定款6条を受けて定められた乙9の同規約11条によれば、被告組合を除名された者は、車体に掲示している「赤帽」の文字の消去、車体塗装のうち赤色塗装の削除塗り替え、屋上表示灯の撤去を行う義務を負うことが認められ、また…被告組合を除名され又は脱退した者は、以後、自己の運送営業に「赤帽」の文字を使用することを禁じられる」。「したがって、被告組合員であった原告は、被告組合を除名された以上、自己の運送営業に「赤帽」の文字を使用することを禁じられ、その営業のために使用する軽自動車の車体に表示されている「赤帽」なる文字及び車体の赤色塗装の消去並びに車体上に設置されている表示灯の撤去を行う義務を負う」。
 
「被告組合の右赤帽表示差止請求は…定款の定めに基づくもので…商標権に基づく請求ではないから、商標権の保護が営業主体の同一性に及ぶかどうかは問題とならない」。
 

第三 平成三年(ワ)第八号事件について
Ⅰ.被告組合の請求について
1.「赤帽」表示の被告組合の営業表示としての周知性について

 裁判所は、以下の「右認定の事実によれば、運送用軽自動車に赤く表示された「赤帽」なる文字は、昭和52年10月の被告組合設立と同時に、被告組合の営業を表示するものとして岩手県地方の需要者の間に広く認識されるようになった」と認めました。


(1)「昭和50年5月、赤帽軽自動車運送協同組合の創始者Mが…車体の上部が赤、下部が白という独特の彩色をし、側面に「赤帽」と大書した軽貨物自動車を用い、「赤帽」を名乗って貨物運送の営業を開始した」。
(2)「Mらは、同士を募り、昭和50年9月には任意組合である赤帽軽自動車運送組合を設立し、同年11月には共同配車センターを設置して赤帽車によるパレードを行うなど、宣伝に努め…運送業界において話題となり、業界紙…一般紙でも報道される」。
(3)「昭和51「被告連合会の前身…赤帽軽自動車運送協同組合が設立され、全国各地に赤帽地方支部が設置されるなど組織が増強され、マスコミ各紙が赤帽の記事を掲載し、NHKも全国ネットで赤帽を報道する等、赤帽ブームともいえる状況を呈した」。
(4)「昭和51年9月ころ、被告組合の初代理事長となったT及び被告会社代表者は…右赤帽軽自動車協同組合に電話をかけたところ、仲間を一〇人集めて一〇台で営業を始めれば支部の結成ができる旨教えられ、…T、被告会社代表者の妻である原告、被告組合代表者、Y及びKの五名が、一人当たり二台、合計一〇台の軽自動車で右協同組合への加入を申し込んだ」。
(5)「右五名は、昭和52年3月8日、岩手県陸運事務所の認可を得て、4月8日、全国赤帽軽自動車組合岩手県支部の名称のもと、任意組合として貨物軽自動車運送の共同受注、共同配車等の営業を開始した」。
(6)「右五名は、右任意組合を中小企業等協同組合法上の事業協同組合とすべく、自ら発起人となって、同年八月八日、創立総会を開催し、同年10月24日、設立登記を了し、被告組合を設立した」。
(7)「このころ、岩手県においても、被告組合及びその前身の任意組合のことを、全国赤帽軽自動車組合の岩手県支部が発足したものとして複数の一般紙が報道した」。
(8)「被告組合及び被告連合会は、所属組合員の使用する車両を「スバルサンバー」に統一するとともに、その車両には赤帽シンボルカラーと称している赤と白により色分けした塗装を施すことを義務付け、また組合員の同一性を示す商号、名称にも「赤帽」を冠することを義務付ける等して、街行く人々に、被告組合ないし被告連合会所属の赤帽車であることを一見して判別できるようにし、当該赤帽車の走行自体によって、赤帽車、したがって、被告組合等の存在を宣伝することに役立たせている」。
(9)「被告組合及び被告連合会は、設立後現在に至るまで、新聞、テレビ、雑誌等への広告による宣伝にも努めている」。
(10)「被告組合は、平成3年10月には組合員数61名、車両数121台となり、平成5年8月には97名、158台へと規模を拡大しながら営業を続け現在に至」る。

 

2.被告会社の行為について
 裁判所は、「被告会社が、NTTの発行するタウンページ岩手県北版等に、昭和61年ころから、「赤帽引越センター」、後には「アカボウ引越センター」と表示し、盛岡(〇一九六)五三‐二三一〇の電話番号のみ記載して「お引越なら、おまかせ下さい」等の宣伝文句を付加する等した内容の広告を掲載して宣伝し」、「右広告は、広告主体ないし営業主体の名称を記載しておらず、「引越」「センター」という部分は普通名称を普通に用いているに過ぎず、右広告における要部すなわち自他識別機能を発揮する部分は「赤帽」「アカボウ」という部分であるところ、その「赤帽」という文字のもたらす外観、「あかぼう」という呼称、赤い帽子という観念のいずれの点からみても、類似性が明らかである」とした上、「被告組合の営業及び右広告に表示された被告会社の営業が、いずれも自動車を使用した貨物運送であること」、「被告会社に対する注文等の苦情が被告組合に持ち込まれていることからみると、被告会社による右広告は、被告組合の営業と混同を生じさせる」などと認定しました。

 次に、「不正競争防止法にいう営業上の利益とは、事業者がその営業を遂行していく上で得られる有形無形の経済的価値その他の利益一般を広くいい、営業に伴う商品や役務の売上などの直接的に金額として現れる有形の利益のみならず、自己の商品等表示の信用、名声、顧客吸引力、出所表示機能及び広告機能等の…無形の利益をも含むと解されるところ、誤認混同の事実が認められる場合には原則として右営業上の利益が侵害されるおそれがある…と認めるのを相当とするから、混同の事実があっても被告組合において営業上の利益を侵害されるおそれがないと認められる特段の事情の認められない本件においては、…現に混同の事実が存する以上」、被告組合は「営業上の利益を侵害され又は侵害されるおそれがある」と判断しました。(下線・太字筆者)

 

3.抗弁について
(1)先使用の抗弁について
 裁判所は、使用開始時期等を認定したほか、「被告会社代表者は、昭和53年5月21日被告組合の専務理事に就任したが、被告組合との関係が円満を欠くに至り…専務理事を辞任している」等も認定し、「認定の事実に照らすと、被告会社が「赤帽」の名称を用いるようになったのは、被告会社代表者が被告組合の専務理事を辞任した昭和56年以後のことで」「それ以前から「赤帽引越荷造センター」という名称を使用していた旨の被告会社代表者の供述は俄かに信用し難」いとし、採用しませんでした。

 
(2)サービスマーク登録の抗弁について
 裁判所は以下のように認定・判断しました。

 「平成2年9月22日に有限会社河南商事から商号変更した有限会社アカボウ岩手(代表者は原告)が平成9年九月26日に「アカボウ引越センター」なる、軽車両運送のサービスマークについて商標登録の出願をして受理されたことが認められるが、被告会社が右出願した事実は認められないし、被告会社や右河南商事が右商標登録を受けた事実は、本件全証拠によるも認めることができない。そうすると、被告会社主張のように、被告組合の被告会社に対する不正競争防止法に基づく本件赤帽表示使用差止請求を認める妨げとならないから、被告会社の右抗弁は採用できない」。
 なお被告会社は「「赤帽」を営業主体を表示するサービスマークとして登録せず、商品を示す商標として登録しただけでは営業主体の表示についての保護は受けられない旨主張するけれども、被告組合の右差止請求は商標権に基づくものではなく不正競争防止法三条一項に基づくものであるから、主張自体失当である」。

 

4.裁判所は、以上の抗弁に加え他の抗弁(本ブログでは省略)も認めず、「被告組合の被告会社に対する本件赤帽表示使用差止請求は理由がある」と判断しました。

 

Ⅱ.被告連合会の請求について
 裁判所は、以下の事実を認めた上、「各赤帽組合の各所属員は独立の営業主体であって、それらの営業主体が「赤帽」表示を使用することは、それが直接に被告連合会のみの営業たることを示す表示を使用することに該当するとはいえないが、「赤帽」表示を使用して運送営業をする者は、外観上一つの企業組織に包摂せられてその営業を行うものであると見られ得るのであり、実際にも、被告連合会が本部となって、各赤帽組合及び各所属員にある程度の統制を及ぼし、「赤帽」表示を用いて営業的組織としての結合を維持させて」おり、「その限りでは、フランチャイズ組織の供与者としての被告連合会、各赤帽組合及び各所属員によって一種の団体ないし結合が構成せられ、機能している」から、「「赤帽」表示は、なお本部たる被告連合会の営業たることを示す表示である」と認め、「したがって、被告組合の本訴請求について説示のとおり、サブフランチャイザーに統制される被告組合による赤帽表示使用差止請求が認められる本件においては、フランチャイザーたる被告連合会による右差止請求」を肯定しました。


(1)「被告連合会は、全国各県に設立された被告組合等の各赤帽組合を統合するために設立された全国規模の組織であって,共同荷受、共同配車、共同宣伝、行政庁との折衝等の事業の外、「赤帽」表示の対外的防衛活動を行っている」。


(2)「「赤帽」の商標は、有限会社進共商事の出願により昭和53年10月31日商標登録を受けた(登録番号第1353994号)もので、株式会社赤帽がその権利譲渡を受け」、「被告連合会は、株式会社赤帽から、その有する「赤帽」商標の専用使用権の設定を受け、フランチャイザーとして、会員である各赤帽組合の理事長(サブフランチャイザー)に対し、「赤帽」商標、商号、サービスマーク、赤帽営業の象徴となるいわゆる赤帽フランチャイズパッケージの使用権を被告連合会運営規約…記載の条件で貸与するフランチャイズ契約を締結し、各赤帽組合の理事長は、所属の各組合員(フランチャイジー)に対し、被告連合会運営規約及び各組合運営規約(被告組合の場合、乙9)の条件で「赤帽」表示を使用して営業するサブフランチャイズ契約を締結し」、「これらの組織を全体としてみれば、被告連合会を頂点とするフランチャイズチェーンの形態をとっている」。 
 

 

■結論

 以上の次第で、原告の本訴請求のうち、被告連合会による平成元年一二月一日付除名処分の無効確認を求める部分は不適法であり、その余の部分は失当であるが、被告組合の原告に対する反訴請求並びに被告組合及び被告連合会の被告会社に対する本訴請求はいずれも正当であるから、主文(「原告は、被告組合の組合員でないことを確認する」「原告は、その営業について「赤帽」なる表示をしてはならない。」「原告は、その営業のために使用する軽自動車の車体に表示した「赤帽」なる文字及び赤色塗装を消去し、かつ同軽自動車の車上に設置した「赤帽」の表示を撤去せよ。」及び「被告会社は、その営業について「赤帽」ないし「アカボウ」なる営業表示を使用してはならない」等)のとおり判決する


■BLM感想等

 本件の裁判例はわかりづらいのですが、BLMの理解としては以下のようなところかと思います。

 まず当事者としては、原告と被告会社V.S.被告組合と被告連合会 ということになりそうです。

 被告らが、原告の経営する被告会社に対し、「赤帽」なる営業表示の使用差止等を求める事案が併合審理された事案ということになると思います。原告は、被告会社の代表者の妻とのことで、BLMとしては当初、原告と被告会社代表者が仲違いしたのかと思ったのですが、そうではないようです。

 また、平成元年12月1日に理事会の決議は、除名決議ではないが、のちに除名決議は有効とする判断も、「???」となりますが、判決をよく読むと、被告会社と原告は、広告掲載を「共同で行っていたもの」で、「被告組合において、「「センター」なる名称が、被告連合会運営規約九条一〇号が例示して禁止している会員組合の施設と誤認させる名称であ」り、「被告組合代表者によれば、現に「赤帽引越センター」に注文した顧客が、荷物配送の遅れや料金についての苦情」等があること、また、「広告には陸運支局に申請した名称を使用すること」としているのに、原告はこれを守らず、被告組合に「河南」の商号で届出ているところ…電話帳に「赤帽引越荷造センター」「赤帽河南TEL盛岡五三‐二三一〇」と掲載」するのみであること、が認められ、そうすると需要者が出所誤認し、「右広告が被告組合に対する電話による注文を阻害していることが明らかで…被告組合の事業を妨げている」ことになり、これをもって、除名事由になる、ということになるようです。

 ですので、本件は、第一段階としては、裁判所がいうように、「被告組合の組合員である原告が「赤帽」なる表示を使用したこと自体を問題としているわけでない」ため、商標権の問題ではなく、「本件除名決議は有効であり、原告は本件除名決議によって被告組合から除名され」、「被告組合の組合員たる地位を失った」との判断がされたということになります。

 そして、第二段階として、被告組合らとしては、はれて組合員ではない原告や被告会社に物申せるということで、原告には被告組合に関し所定の除名事由があり、被告組合の行った本件除名決議は有効であることを前提に、不正競争防止法上の周知表示の誤認混同を理由とする被告組合の反訴及び被告らの被告会社に対する本訴請求はいずれも正当であるということになるというわけです。ここで疑問が生じるのが、原告が組合員の地位にある段階で、組合は不正競争防止法2条1項1号の不正競争として差止請求ができるか、という問題になりますが、需要者の視点に基づき、出所は混同していないとして、差止請求できない、との結論にもなり得ますし、標識の機能を保護する標識法(不正競争防止法2条1項1号含む)に鑑み、品質保証機能を害しているので、もはや組合員であっても、表示の使用を禁止されている以上、組合は差止請求できる、という結論もありそうです。もっとも、本件は表示の使用が認められなかったのは、原告のサービスの質が悪いといった問題というよりは、被告組合らの内部の活動に支障をきたすことが主な理由となると考えられ、品質保証機能を害するといえるか、も、問題となりそうです。

 なかなか、研究材料が詰まった裁判例とも言えそうで、BLMとしては本件まだまだ消化しきれておらず、この辺で。

 

By BLM

 

 

 

 

 

 

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