東京で緊急事態宣言下、酒類を提供する飲食店は休業要請がなされているんですね。飲食店さん大変な時期かと思いますが、そこに食材や酒類・飲料等を提供している事業者さんも大変かと思います。

 お外で、みんなでワイワイ呑んでいる方、たまにはおウチ飲みで、ちょっといつもより高めのお酒を、酒屋さんやスーパー等で買って、ゆっくりするのはどうでしょう。

 とはいえ、一昨日の記事では、おうちカフェを気負わないレベル(インスタ映え気にしたり、お取り寄せとか通販等の消費行動を煽られないレベル)で楽しもう、とも書きました。

 だから、そんなに気負わないで、幸せになるレベルで照れ

 

 今日は、酒類絡みの判決。いささかこじつけですがキョロキョロ いつもは侵害事件ですが、今日は、特許庁に登録商標があった原告が、無効審判請求され、無効審決がなされたところ、これを不服として裁判所に、審決取消訴訟を提起した事案です。

 

シャンパンタワー事件 知財高裁平成24(行ケ)10267 平成24年12月19日判決

(判決文は、最高裁HPより引用。「」内は引用、それ以外はBLM任意に抽出しまとめています。改行、太字、下線等はBLM。)

 

原告 株式会社Gotham

被告 コミテ アンテルプロフェッショネル デ ヴァン ドゥ シャンパーニュ

 

事案の概要

 原告は,各種式典・パーティーの企画立案,酒類の販売,生花,インテリア用品,食料品,清涼飲料水及び日用品雑貨の卸・小売販売並びに輸出入等を業とする株式会社で、「シャンパンタワー」の商標を、第43類「飲食物の提供,….省略…タオルの貸与」を指定役務とする本件商標(登録第5362124号)を登録させました。被告は,フランスの「シャンパーニュ地方ぶどう酒生産同業委員会」であり,フ ランスのシャンパーニュ地方における酒類製造業者の利益の保護を目的の一つとし て法律により設立されたフランス法人であり,対外的に「CHAMPAGNE」 の名称の排他的性質を司法的に保護する等の活動をしていました。そして、原告の本件商標登録について,商標法4条1項7号に違反することを理由に,無効審判(無効2011-890100号)を請求し、特許庁は審理の上、無効とすべきとの審決をしました。

 これを不服とした商標権者が、審決取消を求めて請求をした事案です。

 

当裁判所の判断

 裁判所は、本件商標に含まれる「シャンパン」の文字について、「「CHAMPAGNE」を表す邦語であり,「CHAM PAGNE」(シャンパーニュ)はフランス北東部の地名であ」り、「「CHAMPA GNE」(シャンパン)は,フランスの原産地統制呼称法による原産地統制名称で あって,フランスのシャンパーニュ地方で収穫されたぶどうで作られた発泡性ぶどう酒にのみ使用を許される名称であるところ,シャンパーニュ地方で生産されたシャルドネ,ピノ・ノワール及びピノ・ムニエの3種のぶどうのみが原料として認められ,その年度の最高の生産高等に制限があるなど,さまざまな品質規制がされている」旨認定しました。

(BLMコメント:本件は、商標法の事件ですが、上記のように、国外の法律で規制された名称が問題となっているということですね。にやりひらめき電球)

 

 続けて「すなわち,フランスにおいては,1908年(明治41年)に,「シャンパーニ ュ」という名称が法律上指定され,その後,発泡性ぶどう酒(スパークリングワイ ン)の表記法が定められた。そして,1935年(昭和10年)に,優れた産地の ぶどう酒を保護・管理することを目的として,「原産地統制呼称法」(Appellation d’Origine Contrôlée)が制定され,政府機関であるINAO(Institut National des Appellations d’Origine。原産地名称国立研究所)により運用されている。」との認定をしています。

 そして「同法によれば,原産地統制名称ぶどう酒(A.O.C.)は,原産地,品質,最低アルコール含有 度,最大収穫量,醸造法等の様々な基準に合うように製造されなければならず,その基準に合格して初めて原産地統制名称を使用することができ」、「鑑定試飲会の際に不適当であるとみなされたものは,名称を使用する権利を失うことになっており,厳格な品質維持が要求され」、「原産地統制名称は,産地の名称を法律に基づいて管理し,生産者を保護することを第一の目標とし,また名称の使用に 対する厳しい規制は,消費者に対して品質を保証するものとなっている」と認定した上、「「シャンパン」は,シャンパーニュ地方で,シャンパン法(シャン パーニュ方式)により製造するなどの基準に合致した発泡性ぶどう酒にのみ許され た原産地統制名称である」と判断しました。

 

ほっこり上記の点は、海外に話で、日本国では関係ないよ、といった反論を封じるためか、さらに以下のように認定しています。)

 「 「シャンパン」は,辞書や辞典類にも「発泡性ぶどう酒の一種,フランス北 東部シャンパーニュ地方産の美酒」などと紹介され」、「「シャンパン」の表示を付した商品は,我が国においても高品質で稀少価値を有 する商品として広く販売されており,発泡性ぶどう酒の代名詞として使用されるほど世界で有名なぶどう酒の1つであり,雑誌や書籍,新聞等にもしばしば紹介され」、「それらの文献等でも,「シャンパン」と称することができるのは,シャンパーニ ュ地方においてシャンパン法(シャンパーニュ方式)により製造された発泡性ぶど う酒だけであるとされている」。

 その他、裁判所は、被告(審判請求人)が、「シャンパン」等を含む本件以外の他の登録商標に対しても、取消や無効を求めてきた旨認定しました。

 

本件商標の商標法4条1項7号該当性

 裁判所は、以上認定した上、「本件商標のうち「シャンパン」の部分は,1「CH AMPAGNE」を表す邦語であるところ,2フランス北東部のシャンパーニュ地 方で作られる発泡性ぶどう酒を意味する語であって,生産地域,製法,生産量など 所定の条件を備えたぶどう酒についてだけ使用できるフランスの原産地統制名称で あり,3「CHAMPAGNE」「シャンパン」は発泡性ぶどう酒を代表するほど 世界的に著名であり,我が国においても,数多くの辞書,事典,書籍,雑誌及び新 聞等において「シャンパン」についての説明がされ」、「これらの事実を総合すると,我が国において,「シャンパン」の表示は,「フラ ンスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして,一 般需要者の間に広く知られていることが認められると判断しました。

 そして、本件商標「シャンパンタワー」について、そのうち「シャンパン」の語が,「「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして,周知著名であり,当該表示には多大な顧客 吸引力が備わっていることに照らすと,本件商標からは,「シャンパンタワー」の みならず「シャンパン」という称呼及び観念も生ずるということができる。」と判断しました。うーんひらめき電球この認定部分は、本件商標から「シャンパン」部分を抜き出す箇所なわけですね。)

 

 そして「フランスの法律に基づいて設立された被告は,INAOとともに、 「シャンパン」表示が有する上記のような周知著名性や信頼性を損なわないよう, シャンパーニュ地方のぶどう生産者やぶどう酒製造業者を厳格に管理・統制し,厳格な品質管理・品質統制を行ってきた。このような,被告を始めとするシャンパー ニュ地方のぶどう生産者やぶどう酒製造業者らの努力により,「シャンパン」表示の周知著名性が蓄積・維持され,それに伴って高い名声,信用,評判が形成されて いるものであり,「シャンパン」という表示は,シャンパーニュ地方のみならず, フランス及びフランス国民の文化的所産というべきものになっている。」と判断しました。うーんひらめき電球この認定部分は、4条1項7号という、公序良俗違反を問題にするために必要なような部分を抜き出す箇所なわけですね。)

 

 加えて「「シャンパン」という表示は,我が 国においても,ぶどう酒という商品分野に限られることなく一般消費者に対しても 高い顧客吸引力が化体するに至っていることが認められる」と判断しました。

 

 結論として、「本件商標の文字の構成,指定役務の内容並びに本件商標の うちの「シャンパン」の表示がフランスにおいて有する意義や重要性及び我が国に おける周知著名性等を総合考慮すると,本件商標を飲食物の提供等,発泡性ぶどう 酒という飲食物に関連する本件指定役務に使用することは,フランスのシャンパー ニュ地方における酒類製造業者の利益を代表する被告のみならず,法律により「C HAMPAGNE」の名声、信用,評判を保護してきたフランス国民の国民感情を 害し,我が国とフランスの友好関係にも影響を及ぼしかねないものであり,国際信 義に反するものといわざるを得ないとして、「本件商標は,商標法4条1項7号に該当するというべきである」と判断しました。

 

にやりビックリマークなお、7号で、拒絶・無効とする判断は、近時では慎重になされていると思います。)

 裁判所も「原告が主張するとおりであって, 公益的な事項が問題になっていない私的な領域に関する場合にまで安易に同条1項 7号を適用するのは相当ではない」としつつも、

「本件で問題になっているのは,本件指定役務に係る商標であるから,ぶどう酒又は蒸留酒に係る同項17号が問題になることはな」く、また、「「シャンパン」表示が特定の私人に帰属するものでなく,フランスの原産地統制名称であること,それゆえ,本件商標のような原産地統制名称又は原産地表示として著名な「シャンパン」表示を含む商標に係る紛争は,私人間の私的領域における紛争にとどまるものではなく被告によって代表されるフランスのシャンパー ニュ地方における酒類製造業者を始めとするフランス国民やフランス政府との関係 での国際信義の問題であって公益的な事項に関わる問題であることに鑑みれば, 本件について同項7号を適用することが,同号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈したものということはできない。」と判断しました。

 

BLM感想(余談)

 ゴールデンウィークですが、コロナ禍で、どこにも旅行に行けない!!なんて言わないでニコ音譜 商品を通して、国内外の地域の生産者さん等の努力に想いを馳せ、是非、“お家レストラン”でお楽しみください!

 そして、たまには、ご主人さま、夕飯シェフになってみましょう。最近主人が作ったパスタ。けっこう美味しかったですよ! 

 

 「シャンパンはね、フランスのシャンパーニュ地方の限られた地域で生産されたお酒のみに許されるんだよ〜」ニヤリシャンパンなんてウンチクを語りながら白ワイン、ちょっと家族に白い目で見られつつ、でもなんだかほっこり、ほろ酔い気分で、きっと楽しいと思いますよシャンパンロゼワイン白ワイン

 

by BLM

 

 

 

 

 

 

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