最近、オリンピックが開催されるか否か、謎に包まれています。BLMは、どちらでもいいのですが、誰が主催者で、誰が責任者なのか?が気になります。英文字三文字の標識、つまりJOCとか、IOCとか(その本来の正式名称も即座に思い出せません。)なのか? 主催者が日本国家かと思っている人もいるかも? 東京都はどういう位置付けなのか?
「そもそも主催者は誰?」と思って、「オリンピック 主催」とGoogle検索しようとしたら、「オリンピック 主催 誰」という検索ワードが出てきました![]()
みんな、いまいち解っていないのかもしれませんね。とにかく、責任主体が明確でないような印象は受けます。
ということで、今日は、オリンピックとは関係ありませんが、そういった大会に関する不正競争防止法上の商品等表示(名称等)は誰のものか?について争いになった例を見ていきます。
FWGPA事件 (東京地裁H14(ワ)20610&東京高裁H16(ネ)833)
原告(控訴人):A
被告(被控訴人) 株式会社ツインリンクもてぎ
事案の概要
原告(控訴人)が被告(被控訴人)に対して,被告(被控訴人)が曲技飛行競技会を開催するに当たって,「FWGPA」,「アエロバティックス」,「AEROBATICS」及び「ウイングマーク」の下記標章(裁判所ホームページから引用)を使用した行為は,不正競争防止法2条1項1号に該当する等と主張し、損害賠償及び未払金の支払を請求した事案です。(BLMコメント:この請求が認められるためには、上記標章(商品等表示)が、原告を出所とする必要があります。また、出所は一人だけ、というわけではないので、出所のグループに含まれる、とされればいいのだと思います。)
東京地裁平成14年(ワ)第20610号 平成16年1月19日判決
争点に対する判断(当裁判所の判断)
(判決文は、最高裁HPより引用しました。「」内引用。それ以外はBLM任意に編集。太字、着色、下線、改行:BLM)
争点1(不正競争行為の該当性)について
裁判所は、上記各標識が原告の行う役務(曲技飛行競技会)を表示するものとして周知である旨主張するのに対し、これを否定し、「かえって,〔1〕国際航空連盟(FAI)が実施する役務(曲技飛行競技会),〔2〕同連盟から委託を受けたM又はMの運営する会社が実施する役務(曲技飛行競技会)を表示するものと解すべき」と判断しました。
(BLMコメント:原告の方は、ご苦労されたようですね。訴えを提起した気持ちも解らないではないですが、「FAI」については、「こちら」のサイトが、関係がある可能性があるので、リンクを貼らせていただきます。けっこう歴史が古そうですね。一般財団法人日本航空協会ホームページのサイト中にあります。)
上記判断にあたっては、我国における複数の大会において、「FWGPAの標章」については、「国際航空連盟(FAI)及びFWGPAが大会を主管することが明示され」又は「国際航空連盟(FAI)の公認する競技会の試技・エキシビションとなるとの説明がされ,国際航空連盟(FAI)との関係を示唆する表記がされている」一方、「大会の主体が,原告であるとの表記が示されたことはない」と認定しています。なお、「原告は,大会を実施するに当たって必要な航空法等の各種許可の取得,国際航空連盟(FAI)との調整,大会における飛行の運行計画,飛行管制,競技運営の統括等を業務として担当したが,大会の主管は,国際航空連盟(FAI)であり,主催者は被告である」とし、「原告の担当した業務の内容に照らすならば,FWGPAの標章が,原告の役務を示す商品等表示となる余地はない。
」と判断しました。
さらに、「FWGPA」の標章は,FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICSとの名称のうち」一部「単語の頭文字を取って,短縮したもので」、訴外スイスのブライトリング社が主催し、その名称を冠した「曲技飛行競技会を、国際航空連盟(FAI)が継続して実施する際の名称として付されたもので」、FAIから、同組織のDirector General(理事長)として任命されたMは,その作成する書面等で継続的にこの表示を使用し、「原告は,自らをFWGPA JAPAN DELEGATION,FWGPA日本代表部などと,FWGPAに由来し,かつ,その日本支部を示す名称を使用し」、原告が関与していない中国曲技飛行競技会で「FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS」との表示が用いられ、我国で開催された大会覚書には、「FWGPAについて,国際航空連盟(FAI)・曲技競技部を示す標章等として扱われていること」等を総合考慮すると「FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS」又は「FWGPA」の標章は、原告固有のものではないから,原告の商品等表示とはいえない。」と判断されました。
そして、「ウイングマーク」の標章についても、「大会の主管は,FAIであり,主催者は被告で」、原告の担当した業務の内容に照らすならば、原告の役務を示す商品等表示となる余地はない。」と判断されました。
なお、原告は自らが発案したと主張しましたが、不正競争防止法2条1項1号における保護の対象となる商品等表示は,そもそも,原告の創作に係る表示であるか否かにより消長を来すものではな」く、かつ、Mは,「国際航空連盟(FAI)が引き続いて行う曲技飛行競技会の名称がFAI World Grand Prix of Aerobaticsとされたことを受けて」、フランス空軍のマーク,地球,FAI旗(虹のデザイン),FAI、及び、WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICSという文字を組み合わせた曲技飛行競技会を示すロゴを、建築家のジゼル・ベルジェールに依頼、対価を支払う等した経緯に鑑み、原告は「「ウイングマーク」のデジタル化を指示し,マークを完成させた」経緯があっても、「「ウイングマーク」は,そもそも,Mが考案したロゴに依拠して,これをわずかに改変して作成されたものであって,原告が作成したものということはできない。」と判断されました。
「AEROBATICS及びアエロバティックス」の標章についても上記各標章と同旨の判断がされました。なお、原告は、「AEROBATICSの英語の発音はエアロバティクスであり,原告がこれをあえてアエロバティックスと表記した点に特徴があり,通常の使用方法とは異なる旨主張するが」、この語を「ローマ字読みするとアエロバティックスとの称呼が生じること,アエロバティックスの標章から曲技飛行又は曲技飛行術が想起されることは十分に考えられこと等の点に照らすと」、「特に,通常とは異なる使用方法であると」はいえないとし、「アエロバティックスの標章が,曲技飛行という通常の使用方法を越えて,原告の実施する役務を表示する特別の名称であるとする余地もない。」と判断されました。
(BLMコメント:原告は、自己を出所とする商品等表示だと主張しましたが、請求は受け入れられませんでした。
では、次に控訴審を見ていきます。)
東京高裁平成16年(ネ)第833号 平成16年5月27日判決
(判決文は、最高裁HPより引用しました。「」内引用。それ以外はBLM任意に編集。太字、着色、下線、改行:BLM)
地裁判断では、事実認定部分は端折りましたが、以下細かく見ていきます。どんな事情があったのでしょう?
当裁判所の判断
争点1(不正競争行為の該当性)について
(1) 事実認定
「ア 「AEROBATICS」(エアロバティックス)競技
(ア) 国際航空連盟(FAI)は,航空スポーツの普及を目的として1905年に設立され,1985年に国際オリンピック委員会の承認を受けた非政府,非営利の国際団体で」、その行う競技は幾つかあるが「このうち専用の小型飛行機を用い,設定された空域の中で,規定演技又は自由演技のプログラムで実施する曲技飛行については,「AEROBATICS」(エアロバティックス)と呼ばれている。」
「(イ) スイスの時計製造会社であるブライトリング社は,平成2年から平成4年までは「ブライトリング・マスターズ・オブ・エアロバティックス」(B reitling Masters of Aerobatics)との名称で, エアロバティックスの競技会を主催し,平成5年から平成7年までは,国際航空連盟(FAI)公認の公式世界選手権として,「ブライトリング・ワールドカップ・ オブ・エアロバティックス」(Breitling World Cup of Aerobatics)との名称で,エアロバティックスの競技会を主催した。Bは,平成2年から,上記各競技会の企画等を行った。 」
(ウ) 日本においても「ブライトリング社及び日刊スポーツ新聞社の主催で,ブライトリング・ワールドカップ・オブ・エアロバティックスの最終戦」等が実施された。
イ ブライトリング社の撤退とエアロバティックス競技会の継続
(ア) ブライトリング社はスポンサーから降りた後、FAIは,発案者であるBを同競技会のディレクターに任命し、FAIの下部組織であるFAI International Aerobatics Comission(FAI国際エアロバティックス飛行委員会,CIVA)が同競技会を継続し、その名称は「ブライトリング社主催の名称とは異なる名称と」し、「実施をBに委託することを採決し」、Bを、FAIの平成8年のエアロバティックスシリーズのマネージャーに任命し、「CIVAの代表として行動する全面的な権限を与えた」。
(イ) CIVAは,上記競技会の新名称を「WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS」とすることを決定し,CIVAの会長は、Bに、同名称の登録手続をまもなく行う旨を伝えた。
(ウ) Bは、上記マネージャーに任命された後、珠海で同競技会である「FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS Airshow China」を開催し、「「ブライトリング・ワールド カップ」を「WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS」 として,継続した」。
ウ 但馬大会の準備
(ア) Bは控訴人の従業員であったDにあてて、「「FAI WORLD GRAND PRIX OF A EROBATICS」との名称が公式に採択されたが、FAI、及び、FAI国際エアロバティックス飛行委員会(CIVA)によって公表されていない旨を書面で伝えている。
(イ) Dは、Bに、但馬大会開催の実現のために「FAI WGPA Japan Delegation(以下,「FAI日本代表部」という場合がある。)を設置すること」、「控訴人及びDが上記日本代表として活動できることが必要であることを伝え」る等し、その後、Bは、Dに、FAI総会で「Bと控訴人及び Dとの間で契約が締結され,World Grand Prix of Aero baticsの銀行口座に,保証金として20万米ドルの金員が振り込まれない限り,FAIがFAI日本代表部を承認しない旨決定したことを伝えた」。
(ウ) 「但馬大会開催に向けての日本側の準備は,資金的な理由などから,必ずしも順調には進展」せず、 Bは「但馬組織委員会及びFAI日本代表部事務局長のDあてに」「但馬大会開催のための登録及び確定のため,FAI World Grand Prix of Aerobaticsの銀行口座に」「前渡金として10万米ドルを振り込むよう請求した」。
(エ) 控訴人は,「FWGPA日本代表部のテクニカルアドバイザー」との肩書きで、Bに「但馬空港フェスティバル実行委員会が,同年のFAI World Grand Prix of A erobaticsを但馬において開催する申請を公式に行うこと」、地元市議会が「25万米ドルを支払うための予算を承認し」、10万米ドルは前渡金として所定口座に振り込むこと等を回答した。「控訴人は,自らを,FWGPA日本代表部又はFWGPA JAPANテクニカルアドバイザー等と称していた。なお,Dは,同月に退職し」、Bとの連絡は「専ら,控訴人自身が担当するようになった」。
(オ) Bは「但馬空港フェスティバル実行委員会会長に対し,但馬でのFAI World Grand Prix of Aero baticsの開催が正式に登録でき次第,上記委員会に協力し」、「FAI World Grand Prix of AerobaticsのDele gate(代理,代表)を控訴人と」し、「控訴人は,FAI World Grand Prix of Aerobaticsと上記委員会との間の連絡員として,大いに役に立つこと」、「Bが署名した時のみ国際航空連盟(FAI) が責任を負うこと等を伝え」た。控訴人は「「マーケティング・サービスイズ代表A」名義で,Bの「World Grand Prix of Aerobatics」名義の口座に前渡金10万米ドルを振り込んだ」。
エ 但馬大会,とよころ大会の開催
(ア) 「兵庫県但馬空港において,「FAI World Grand Prix of Aerobatics in Tajima」との名称で,エアロバティックス競技会が」、「主管が国際航空連盟(FAI),主催が但馬空港フェスティバル実行委員会として開催され」、控訴人は「必要な航空法上の許可を得る等,但馬大会開催のために必要な作業を行い,豊岡市から開催実施委託料の支払を約された」が、「控訴人は,豊岡市から,任意にその支払を受けることができず,やむなく訴えを提起して,裁判上の和解により,支払を受けた」。
「なお,但馬大会においては,その広告用のポスター,入場券,名札,表彰状及び会場内通行証」等において「アエロバティックス及びAEROBATICSの標章並びにウイングマークが使用された。また,但馬大会に関する報道においても,但馬大会において行われた曲技飛行についてアエロバティックスと表記」等された。
(イ) 「北海道とよころ飛行場において、エアロバティックス競技会が開催され、「主管がFAI World Grand Prix of Aerobatics Head Officeとされ」同競技会のポスターには「「FWGPA-J APAN DELEGATIONが共催する旨の記載がされているほか」「「アエロバティックスには,国際航空連盟(FAI)の公認する最高峰のFA I ワールド・グランプリ・オブ・アエロバティックス(FWGPA)があり,世界最高のパイロットによる競技会となります」」等と記載されている。なお「開催に当たり必要となる施設等の使用承諾,及び航空法上の各種許可は,いずれも 控訴人に対しされているが」、「控訴人の肩書きは,FWGPA-J」「FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS JAPAN DELEGATION」「FWGPA JAPAN代表」などと付記されている。
オ 平成10年大会の開催
(ア)「被控訴人は,平成8年ころから,ツインリンクもてぎサーキットにおいてエアロバティックス大会を開催することを検討し始め,同年8月6日には,被控訴人のE課長とF主任」「C」等と控訴人が面会した。控訴人及びCの名刺には,「WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS」と記載され、控訴人の肩書きは「TECHNICAL ADVISER/JAPAN DELEGATION」、Cの肩書きは「PUBLIC AFFAIRS/JAPAN DELEGATION」」だった。
(イ) 控訴人は,Fらから「ツインリンクもてぎサーキットの開業祝典行事の一つとして曲技飛行競技会を開催したいので,そのための業務を実施してほしいとの依頼を受けた。控訴人は,正規の飛行場ではないツインリンクもてぎサーキットにおいて曲技飛行競技 会を開催することができるように種々の航空法上の許可を得る作業を行い,控訴人名義で飛行場外での外国曲技専用航空機運航に関する許可等を得」、同サーキットにおいて、曲技飛行競技が実施された。許可取得の際の控訴人の肩書きは「FWGPA-J」「FWGPA JAPAN代表」「FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATIC S JAPAN DELEGATION」などとされていた。「控訴人は,前記大会の終了を陸上自衛隊等に報告する際には,FWGPA-J 日本代表との肩書きを使用した」。
(ウ) 「ツインリンクもてぎサーキットにおいて全日本選手権フォーミュラ・ニッポン第4戦が行われた際にエキシビションとして曲技飛行が行われた」が、「各種許可等も控訴人名義で取得された」。「その肩書きは,FWGPA-J」、「FAI WO RLD GRAND PRIX OF AEROBATICS JAPAN DE LEGATION」とされ「対日本代表と記載されたものもあった。
(エ) 被控訴人は「平成10年大会開催のため」、「「FAI WORLD GRAND PRIX OF AV IATION PROMOTER AGREEMENT」と題する契約(以下「平 成10年大会契約」という。)を締結した」。同契約においては,Bの肩書きは,「FAI WORLD GRAND PRIX OF AVIATION (FWGPA)代表者」とされている。」
また,被控訴人は、控訴人との間で「’98アエロバティックス日本グランプリ開催に関する覚書」を取り交わした。控訴人については「国際航空連盟・曲技飛行競技部門FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS 日本代表部 A」と記載され、控訴人も,自ら「FWGPAJ 対日本代表 A」と署名した。
(オ) 「BがFWGPAチーフエグゼクテ ィブ(最高責任者)として被控訴人に提出した書類」では、「控訴人が,日本もてぎグランプリに関連したFAI World Grand Prix of Aerobatics/Aviation(FWGPA)のマネジメントチームの一員であることを認証する旨,控訴人の役割は,FWGPAのチーフエグゼクティブと主催者との間で交わされる契約における話合いと契約の署名に関する進行に携わり」「主催者との良好な調整に関わるものである旨」、「控訴人は,管理上発生するすべての申請事項,運送,衣食住,規則に関する解釈や詳細点などにおいて,日本もてぎグランプリの主催者である被控訴人の業務をアシストする権限をFWGPAチーフエグゼクティブより付与されている旨が記載され」、「控訴人は,Bと被控訴人との間の平成10年大会契約の締結に当たり,両者の間に入り,その調整事務等に関与した。
(カ) 平成10年大会契約においては,「FAI(国際航空連盟)は,... “FAI WORLD GRAND PRIX OF AVIATION”と称さ れるスポーツイベントに関連する全ての権利を保有し管理する。」,「FAIは, 世界中のFWGPAの開催と上演をBに任命し,その権利を与えている。」,「FWGPAは,被控訴人に対し,当該イベントの日本における企画及び主催する権利 ...を与える。」と規定され,また,被控訴人が,FWGPAに対し,開催費用とし て合計26万5000米ドルを支払うこと等が定められている。なお,上記支払に ついては履行済みである」。同覚書には「控訴人の業務として,平成10年大会を行うに当たり必要な航空法等の各種許可の取得,国際航空連盟(FAI)との調整,大会における飛行の運行計画,飛行管制,競技運営の統括,「FWGPA」,「C-1」等国際航空連盟(FAI)・曲技競技部固有の商標・意匠標章等知的財産権の管理,機材の輸送に関する手続等の統括,パイロットらの査証の取得,通信機器,音響機器等の設置監修,広報用素材の提供等,航空機運行保険契約の締結が挙げられ」、「被控訴人が,控訴人に対し,大会開催準備・開催に至る実施報酬として4500万円を支払うことが定められ」その「支払を受けた。なお,航空法上の各種許可はいずれも控訴人名義で取得されているが,その肩書きは,FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS JAPAN DELEGATION」などとされている。」
(キ) 被控訴人は「ツインリンク もてぎサーキットにおいて,平成10年大会を開催した。同大会は,主管がFWGPA及び国際航空連盟(FAI),主催が被控訴人として開催された。その際,平成10年大会のポスターには,「FWGPA」,「アエロバティックス」及び「AEROBATICS」並びに「ウイングマーク」の標章が,いずれも使用された」。
カ 平成11年大会の開催 省略
キ ウイングマークの創作等 省略(地裁判断と同旨)
(2) 判断
以上認定した事実を基礎として,本件営業表示が,控訴人の行う役務(曲技飛行)を表示するものと認められるか否かについて判断する。(事実認定部分は省略し判断のみ引用等します。)
ア 本件営業表示全般について
裁判所は、「各大会における対外的表示においては,FAIが大会を主管する旨の表示がされている一方,控訴人が大会を主管する旨の表示は一切ない。また,各大会の開催に際して締結された契約上も,被控訴人がFA Iないしこれを代表するBから許諾を受けて各大会を主催し,控訴人が,「国際航空連盟・曲技飛行競技部門日本代表部」として,被控訴人の委託を受けてその運営等を業務として担当することが規定されている。これらの事情に鑑みれば,平成10年大会及び平成11年大会において」、控訴人が「必要な航空法等の各種許可の取得,国際航空連盟(FAI)との調整,大会における飛行の運行計画,飛行管制,競技運営の統括等を業務」「を担当していても,そのことをもって,本件営業表示が,控訴人の実施する役務(曲技飛行競技会)を表示するものとは到底いえず,かえって,本件営業表示は,
1国際航空連盟 (FAI)が実施する役務(曲技飛行競技会)ないし
2同連盟から委託を受けたB 又はBの運営する会社が実施する役務(曲技飛行競技会)を表示するものと解すべきである。」
と判断しました。(BLMコメント:地裁の判断と同旨かと思います。)
イ FWGPAの標章について
控訴人の上記標章についての主張は,以下の理由からも失当である。すなわち,FWGPAの標章は,FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICSとの名称のうち,FAI,WORLD,GRAND,PRIX及びAEROBATICSの各単語の頭文字を取って,短縮したものである。そして,FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICSは,スイスの会社であるブライトリング社の主催する「ブライトリング・ワールドカップ・オブ・エアロバティックス」を,国際航空連盟(FAI)が引き継いで実施する際の新たな名称として付されたものである。
国際航空連盟(FAI)からFAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICSの競技会の実施について全面的な権限を与えられたBは,その作成する書面等で継続的にFAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICSとの表示を使用している。これに対して,控訴人は,自らをFWGPA JAPAN DELEGATION,FWGPA日本代表部などとFWGPAに由来し,かつ,その日本支部を示す名称を使用している」等考慮し「FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS」又は「FWGPA」の標章は,控訴人固有のものではないから,控訴人の商品等表示とはいえない。」と判断しました。(BLMコメント:地裁の判断と同旨かと思います。)
ウ AEROBATICS及びアエロバティックスの標章について
「控訴人の上記各標章についての主張は,以下の理由からも失当である。すなわち,AEROBATICSとの名称は,一般に,曲芸飛行又は曲芸飛行術を意味し」、「現に,平成7年に但馬で行われた但馬空港フェスティバルにおいても,「エアロバティックス」の名称が曲技飛行を指すものとして使われている」。「上記各標章を曲技飛行競技会の役務に使用しても,出所表示機能を有するものではないから(不正競争防止法12条1項1号参照),上記各標章が控訴人の実施する役務(曲技飛行競技会)を表示する営業表示であるとはいえない。」なお、「アエロバティックスとの表記が,特に,通常とは異なる使用方法であるということはできないから,アエロバティックスの標章が,曲技飛行という通常の使用方法を超えて,控訴人の実施する役務を表示する特別の名称であるとする余地もない。」と判断しました。(BLMコメント:地裁の判断と同旨かと思います。)
エ 「ウイングマーク」の標章について
「上記標章が控訴人の創作に係る標章であるか否かの点は,同標章が不正競 争防止法2条1項1号における保護の対象となる商品等表示に当たるか否かの結論 に何ら影響を与え」ない。また「「ウイングマー ク」は,そもそも,Bが考案したロゴに依拠して,これをわずかに改変して作成さ れたものであって,控訴人が作成したものということはできない」。(BLMコメント:地裁の判断と同旨かと思います。)
争点(2)(共同不法行為の成否)について
(1) 事実認定
ア 被控訴人は、「平成12年大会についての日本における唯一の代理人としてC及びIを任命し,平成12年大会に関連する第三者とのすべての協定,合意又は契約は,BとCとの連帯の署名をもってのみ有効である旨記載された書面を受け取った」。
「また,被控訴人は,同年5月31日にも,再度Bから,控訴人とBとの間にはもはや関係はなく,Cを日本における代表者と考えてほしいこと,グランプリに関するあらゆる合意はBとCとの両者の署名により,独占的に行わなければならないことを内容とする電子メールを受け取った」。
イ 被控訴人は「Bとの間で,「FAI WORL D GRAND PRIX OF AVIATION TRM AGREEMEN T」と題する契約(平成12年大会契約)を締結」し、「「FAI WORLD GRAND PRIX OF AVIATION マネージングディレクター」と称するCとの間で,平成12年6月25日,「’00エアロバティ ックス日本グランプリ開催に関する覚書」を作成し,Cに対し,大会開催準備・開催に至る実施報酬として,3000万円を支払う旨約し」、「被控訴人は,控訴人との間で契約を締結することなく,同年10月,平成12年大会を開催 した。」
ウ 被控訴人は、Bとの間で「「FAI WORLD GRAND PRIX ORGANISER AGREEMENT Motegi,Japan」と題する契約(平成13年大会契約)を締結した」。「被控訴人は,控訴人又はCと覚書を取り交わすことなく,同年11月,平成13年大会を開催した」。
エ 「平成12年大会及び平成13年大会では,主管が国際航空連盟(FAI)及びFAI-WGPAとされている」。
オ 控訴人は、「Cが,控訴人から管理を委託されていた控訴人所有の通帳,印鑑その他の物品を使用して,自己の用途に宛てるため現金を引き出す等の行為をしたとして,Cを業務上横領罪で豊平警察署長に対し告訴し,そのころ,告訴状の写しを被控訴人に送付した」。「また,当時の控訴人代理人弁護士は」「被控訴人に対し,FWGPAの標章に係る商標権等は控訴人に帰属するものであり,Cはこれらの権利とは無関係である旨の意見書を提出した」。
(2) 判断
「被控訴人が平成12年大会及び平成13年大会について控訴人との間で業務委託契約を締結しなかったのは,FAI(CIVA)を代表するBが,被控訴人に対し,控訴人とBとは関係がなくなったので,控訴人を日本における代表者として取り扱わないようにしてほしい旨指示したからである。そうすると,控訴人から 被控訴人に対し,Cを告訴したこと等の通知があったことを考慮しても,被控訴人 が,FAIの主管の下に平成12年大会及び平成13年大会を実施する目的で,FAI(CIVA)を代表するBの指示に基づいて,控訴人との間で業務委託契約を締結しなかったこと」等に,不法行為としての違法性があるとは認められない」等とし、「被控訴人による共同不法行為に関する控訴人の主張は理由がない。 」とされました。
3 争点(4)(被控訴人の控訴人に対する未払金の有無)について
省略
BLM感想
争点2を見ることで、なぜ、争いとなったかが見えてきます。控訴人(原告)に何か不正又は不正競争の目的があったかと思い、細かく高裁の事実認定を見て行きましたが、これといって見つかりませんでした。そうすると、原告(控訴人)が、ある日、日本の担当者は別の人になったからと国際航空連盟(FAI)が言ってきたら、怒りたくなる気持ちは解ります。
ただ、誰が出所か?ということになると、やはり、国際航空連盟(FAI)なんだろうと思います。又は、全くの第三者に対し、不正競争行為を排除すべく、今回の控訴人(原告)が不正競争防止法2条1項1号を主張したら、「他人」(周知な商品等表示の主体)たるFAIグループの一員で、我国における品質管理権限が認められ、権利行使できた可能性もあります。しかし、もはや、国際航空連盟(FAI)が、控訴人(原告)は日本における担当者ではない、と言い放ってしまったら、不正競争防止法2条1項1号の「他人」(表示主体)の一員とは認められないのでしょうね。
控訴人(原告)は、「必要な航空法等の各種許可の取得,国際航空連盟(FAI)との調整,大会における飛行の運行計画,飛行管制,競技運営の統括等を業務として担当し」ていた訳で、その際の名前は控訴人(原告)だったとしても、需要者向けのパンフレットや広告等には、国際航空連盟(FAI)が主管等である旨書かれていたので、結局、“標識法”の法目的が、需要者の出所の混同防止と、信用保護により、公正な競争秩序維持だとすると、表示主体は、国際航空連盟(FAI)ということになるのでしょう。控訴人(原告)の会社の名前を「主催者」としていれば、結論は変わったかもしれません。
控訴審判断で、被控訴人が開催予定の「曲技飛行競技大会直前の練習で,人身事故が発生し,大会の開催が中止され」、「Bは,事故当時来日していたが,事故について責任を問われる立場にないとして,航空機事故調査委員会の事情聴取にも応じることなく離日し」た等の控訴人の主張に対し、「Bが航空機事故調査委員会の事情聴取に応じたことが認められ」「負傷したパイロットの治療費」は、被控訴人が「病院に立て替えて支払をした上,Bが被控訴人に立替払い分を支払った」等としています。Bは、FAIの下部組織のFAI International Aerobatics Comission(FAI国際エアロバティックス飛行委員会,CIVA)を代表として行動する全面的な権限が与えられた者です。そうすると、FAIが責任を果たしていないような事実も認定されなかったようです。本件は、控訴人(原告)がかわいそうですが、判断としては妥当だったのでしょうかね。
by BLM
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